第22話・思い出キャンプ

「どうも、いきなり失礼します。藤谷航也ふじたにこうやや。キャンプ場の話長すぎとか思うてるそこの貴方!もうちょっと付き合って下さい。えっ? もう時間無い? しゃあないなぁ……ほな、またな~。……あっ、次いでに言わせていただきますと、」




算学数さんがくすうが一人でいる所に豊海瑠璃とようみるりが話し掛けてきた。

「お疲れ様です!」

算学はその場で立ち上がり、瑠璃に向かって敬礼をした。全身プルプル動いていた。

「いやいや、軍隊じゃないんだから、リラックスしてよ。それに俺は君……数と仲良くなりてぇからよ」

算学は心の声でこう思った。


「(なんで寄りによって風じゃなくて、コイツに下の名前で呼ばれなくちゃいけねぇんだ!)」


「アイツ、結構不器用だし、おかしな奴だが、良い奴だからよ。これからも仲良くしてやってくれ」

瑠璃はそう言うと、歯を見せて笑った。算学は心の声でこう思った。


「(お前は風の父さんか!ちょっと偉そうにすんな! んで、歯並び良過ぎだろ! 虫歯ねぇじゃねぇか!)」


「はい! 分かりました!」

算学は再び瑠璃に向かって敬礼をした。

「君も変わってるねぇ……」

瑠璃が苦笑いすると、テントの方へ帰っていった。

「絶対コイツに負けねぇからな!」

算学はこの時、力強く誓った。




東城風とうじょうふう三毛弥生みけやよい西尾染杏にしおそあん東城柚とうじょうゆずの女子組は一緒にテントの中にて就寝時間に入る所だった。

「先に寝かせて貰います!」

柚はさっさと夢の中へと行ってしまった。

「……誰が先に寝てんねん。迷惑者めが!」

風は優しく柚の頭を撫でて、優しい声で説教をした。


「私達も寝ますか。弥生さん」

染杏が弥生の方へ振り返ると、弥生も夢の中へと行ってしまっていた。

「こんちくしょうめが!」

謎の弥生の寝言を受けて、風と染杏は顔を合わせて笑った。


それから暫く染杏と風は横になりながら、会話をしていた。

「もう寝ましたか? 風さん?」

染杏は目をつぶりながら、風に確認をした。

「起きてるよ。今日は色んな出来事があったね」

風は目をつぶりながら、返答した。


「はい。小倉さんの事はありがとうございました。知らない小倉さんを知る事が出来た感じです」

染杏は小倉真依おぐらまいから逃げようとしていた。が、この一件で逃げるのを止めようという志した。

「そうだね。私もあの子を支えられたらいいと思ってるから」

風もこの一件で真依の見方が変わっていた。そんな忙しい一日も終わろうとしていた。




そしてキャンプ二日目になった。

「男だけのテントって臭くて堪らんなぁ」

航也はそう言いながら、テントのチャックを開けて外へ出た。

「いちよ、併設してある風呂場で洗ってるんだけどな」

瑠璃は欠伸混じりで言い、航也と共にキャンプテーブルの方へ行った。

そうして女子組もキャンプテーブルの方へ集まり、朝食タイムへと移ろうとしていた。


「ん? 風は?」

瑠璃がいち早く気づき、弥生達に質問した。

「夢の中だよ。……夜遅くまで起きてたのかね」

答えた弥生は少し呆れているらしい。

「そうか……お姉ちゃんお化けが出るかもって寝れなかったんだ」

柚が勝手に寝れなかった理由を作った。

「お化けか……」

航也がそう呟くと立ち上がり、叫んだ。


「そうだった!! 肝試し忘れてた!!」

航也一人だけ悔しがり、皆ガン無視で朝食を作り出した。

「さっさと作んぞ航也」

瑠璃は航也に対してケースの入った包丁を投げた。

「危ねぇじゃねぇか!」

「朝から鼓膜を破ろうとした罰だ」




風は目を覚ました。味噌汁の良い匂いを嗅ぎつけて。

「なァっ!? もしや……」

風は咄嗟にテントのチャックを開いたと同時に目の前に算学の顔とご対面した。

「きゃあぁぁ―――!!」

風は驚き、叫ぶと同時に近くにあったカバンを算学目掛けてぶん殴った。算学は衝撃で後ろに頭が仰け反り、地面に頭を打ち付けた。運良く柔らかめの地面だっため、頭はケガには繋がらなかった。算学がすぐナナメを見るとそこそこ大きい石ころがあった。

「危ねぇやつだ。ほら、下手したら死ぬ所だっただろ」

そう言って近くにあった石ころを拾い上げ、風に見せた。


「ごめん。ごめん。ごめん」

風は三度謝り、算学は深い溜息をつき、冷たい目で

「ごめん”なさい”だろ。ほら、お前が寝ている間に朝食だ。……俺が呼びに来たとか言うなよ……」

後半恥じる算学だったが、風はその様子を見てニンマリ笑った。




「あれ? いつの間に風がいる」

弥生達に気づかれる事なく、風と算学はキャンプテーブルへと合流し、三分程経った頃、風がいることに弥生に気づかれた。朝食作りももう後半で、味噌汁始め、卵焼きやサンマの塩焼き、ベーコンエッグといった朝食の定番が出来上がっていた。今はほうれん草のソテーや飯ごうでのご飯を炊いている所だった。


「おはよう。いつまで寝てんだよ」

呆れ気味の弥生、皿洗い中、

「おはようございます。朝食はほぼ出来上がってますよ」

丁寧に挨拶、ほうれん草のソテーを作ってる染杏

「お姉ちゃんは朝食抜きだ!」

朝から五月蝿い柚、弥生の手伝い中

「おはよ……指を切った!?」

おっちょこちょいの航也、食材を切っていた。

「お化けが出そうで怖くて寝れなかったのか?」

からかいながらもご飯を炊いている瑠璃によって風の今日のスタートを迎えた。

「遅れてすいやせん! 何手伝えばいいでやんす?」

風が皆に聞いたが皆声合わせて

「もう終わりでやんす!」




朝食タイムも終え、一行は少しずつ帰る準備をする事にした。キャンプ二日目は午前中にはキャンプ場を後にする予定だった。残り時間魚釣り、虫取りを満喫そして、

「これよりスイカ割り行いまーす!」

航也の一声でスイカ割りが始まった。スイカはこの場に来れなかった #柱号平太__ちゅうごうへいた__#の家の差し入れだ。ビニールシート上にてスイカが置かれ、航也から順にスイカ割りがスタートした。ダミーのソフトボールを上手く利用して、航也は簡単に騙されソフトボールに向かって棒を振り落とした。

「まぁ、最初の人は割らないのはお約束やからな」

その後、瑠璃、染杏、柚、弥生、算学そして最後は風。肝心のスイカは既に割れていた。


「ねぇ、これやる意味あんの?」

風の不満に答えるかのように航也が新しくスイカを取り出した。 そして風は皆のアシストもあってスイカに向かって棒が見事にヒットをした。

「割れなかった部分は包丁でカットやな」

皆でスイカを食べて、スイカの種を飛ばした。そんな忘れられないキャンプの思い出が終わりを告げた。


「楽しそうね」

風達の様子を見る者がそこにはいた。またそれを同調する者もいた。

「あぁ。今は増分楽しんでるがいい」

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