第12話・実らぬ恋と友

「何頼む?」

豊海瑠璃とようみるり西尾染杏にしおそあんはとある喫茶店にいた。

「その……えっと……」

「遠慮しないで。ここは俺が払うから」

「そういう事じゃなくて……」

「風の事?」

「そうです!」

染杏は思わずデカい声を出してしまい、焦った。

「すいません……」


「そうだね……ハッキリ言うと幼馴染だよ」

「それは知ってるんです。その……別の関係というか……」

「別の関係? いや、特に。最近さぁ、アイツ変わってな」

「確かに見ててわかりました」

染杏は廊下から東城風とうじょうふうと瑠璃の様子をこっそり見ていた。

「下の名前呼びになりましたよね」

「まぁ、それもあるけども」

染杏は勇気絞り出して、言った。

「東城さんは豊海さんに対しては別に好きとかそういう感情を抱いてないそうです!」


瑠璃は少し間を空けて言った。

「えっ? 聞いたの? 中々大胆だね。染杏ちゃん」

下の名前で呼ばれた染杏はドキッとしてしまう。

「まぁ、俺なんか好きになる訳無いよ。俺はアイツをイジるのが大好きなだけだよ」

「そうですか……」

瑠璃は手を上げて、注文を頼んだ。

「俺はレギュラーコーヒーと本日のおすすめを。染杏ちゃんはどうする?」

「あっ。えっと……メロンソーダとパンケーキを。」

「ご注文ありがとうございます。少々お待ち下さいませ」


「染杏ちゃんは俺の事どう思ってるの?」

急なストレートな質問に染杏は焦った。

「ごめん。焦らせるつもりは無かったんだ。意地悪したかった訳じゃなかったんだ」

今度は、瑠璃が焦った。

「好……好き……好きです!」

染杏は顔を下に向けながら、恥ずかしながら言った。

「そうか。実はさ。前に風に頼んだ事あるんだよ」

「えっ?」


「風に俺の事を諦めさせて欲しいって言ったんだよ」

その言葉に染杏はショックを隠せなかった。

「うそついたんですね」

その声は暗い声で、決して瑠璃の顔を見ず、放った言葉だった。

「うそ?」

「やっぱり、東城さんの事好きなんですね」

相変わらず、先程と同じ状況だ。

「いや、そうじゃない。決して風とは……」

「分かりました!!……もお……私の事は……ほっといてください!!」

染杏は立ち上がり、大きな声で言うと、勢いよくその場から離れた。

「お客様? メロンソーダとパンケーキは?」

「全部自分が食べます。……勘違いさせちゃったな。……馬鹿だな。俺」


「お二人さんもしかして……」

東城風とうじょうふう三毛弥生みけやよいは芽生商店街の駄菓子屋に来ていた。駄菓子を物色している中、一人の男性に話しかけられた。

「あの……父がお世話になりました」

「父? まさか、あのおじいちゃんの息子さん?」

話しかけた男性は風達が、小学生だった頃まで駄菓子屋の店主だったおじいちゃんの息子だった。よく見ると、同じ所にホクロがあった。

「でも、お世話になったって?」

「父が駄菓子を買ってくれる。=お世話になってると、自論をよく僕に聞かせてくれました」

「私達のことよく分かりましたね?」

「その……三毛猫柄の髪型で」

それは風の隣に居た弥生の事である。

「弥生は昔からその髪型だからね」

弥生は顔を赤くして、髪の毛をいじった。

「そういう風は昔は短髪だったよね」

「そうだったんですね。正直、三毛猫の友達としか父から言われてなくて……」

今度は風が顔を赤くした。


「これが父が大切にしていた駄菓子屋だって、今日改めて実感しました」

「なんか、そう言うと私達まで嬉しくなります」

「いえいえとんでもない」

「また来ます。五日間だけですけど」

「ありがとうございます。来年も開店したいと思います。」

「本当ですか!?」

「はい。まぁ僕も他県で別に仕事があって、また期間限定になりますけど」

「忘れないようにしないとね」

風はチラリと弥生の顔を見た。

「もちろん」


風と弥生は芽生商店街にて、風の母に頼まれたお使いも済ませ、家に帰る事にした。

「そこのお二人さん。ちょっといいかしら」

「貴方は?」

2人をを止めたのは染杏と初めて会って、風にとって爆弾発言だったあの時の染杏と一緒にいた女子生徒だった。今は普段着である。

「私の名前は小倉真依おぐらまいです。」

「はぁ。私達は……」

風が自己紹介をする前に真依が話始めた。

「興味無いです。貴方達の名前は」

「ちょっ……」

「染杏が好きな彼って、確かこの人では?」

真依が一つの写真を二人に見せた。


「染杏ちゃんと瑠璃!?」

「これってどういう状況でしょうか?まさか、デート?」

「デート……」

「頑張って下さいね。では」

真依は2人を通り過ぎる時、つまらなさそうに言った。

「染杏は本当にチョロいなぁ。私の事を友とか勝手に思ってるんでしょうね」


算学数さんがくすうは芽生商店街に来ていた。が、風に出くわし、逃げた。

「なんでいるんだよ」

算学の後ろに猫が寄ってきた。

「猫!!」

算学は大の猫嫌い。いや、動物嫌いだっため、大きな声が芽生商店街に響いた。再び算学は走り、今度は猫から逃げた。


「風? 気にしないでいいんだよ」

「気にしない? ダメだよ!」

「何が?」

「染杏ちゃんの事だよ。染杏ちゃんはもしかしてあの野郎の事を信じてるままだよ!」

「そっち!?」

「そっちってどっち?」

「いや、染杏と瑠璃が一緒に居た事。風は瑠璃の事好きなんでしょ?」

「からかってるの?」

「いや、からかってる訳じゃないよ。……えっ?」

「えっ? じゃない! 別に瑠璃は別になんだから!」

「言ってる意味分からないし」

「とにかく、違うの! 染杏ちゃんを探そう!」

「今から!?」


染杏はどこに住んでるのか分からない。故に探し回り、結局辺りは夕焼け空。

「どうすればいいのよ!」

「風、落ち着こう。瑠璃に聞けば」

「呼んだか?」

二人の目の前に瑠璃が現れた。

「出たな!」

「いや、RPGのモンスターじゃないし。俺に用か?」

「染杏ちゃんは何処に行った?」

「まさか、喫茶……」

「とぼけないで!」

「まだ言ってる途中だろうが!!」

この二人のやり取りに弥生は思わず、笑ってしまった。

「ごめん。続けて」


「俺のせいで逃げた」

「はい?」

風と弥生の頭の上に、はてなマークが浮かんだ。

「諦めて欲しい事を直接言っちゃって……」

「私に頼んだ事を結局、瑠璃が言ったの?」

この時、弥生の頭の上にはまだ、はてなマークが浮かんでいる。

「実は弥生、染杏ちゃんが俺の事好きなのは知ってるよな。あの時、いたし。」

「うん。で? ……ん? そう言う事か」

「何、自己解決してんだよ!」

今度は風が思わず、笑ってしまった。

「すいません。続けて下さい……」


「つまり、瑠璃から風に、染杏ちゃんに瑠璃の事を諦めて欲しいと頼んだ訳ね。で、それを瑠璃が言っちゃった訳ね」

ここで弥生が話の整理をする。

「それで何で染杏ちゃんを探してるんだよ」

「染杏ちゃんと初めて会って時覚えてる?」

「うん。風が俺の事好きという事を言った時だろ」

「声に出さないで!! 恥ずかしいから!!」

「あっごめん。で、話の続きは?」

「なんで、こうも冷静なのよ!」

「もうすぐで三千字超えそうだから、今回の話はおしまい。第十三話に続く!!」

「なんの話よ!!」

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