第6話・誤解と再会

外は未だに土砂降りで風が吹き荒れている。東城風とうじょうふう豊海瑠璃とようみるり算学数さんがくすうに呼び出され、教室を出て廊下を歩き、屋上の近くの部屋へと算学に案内された。

「ここで話そう。僕と君たちの全てを」


「ここって……生徒指導の部屋じゃ……」

「たまたま鍵を手に入れた。文句あるか」

風はちょっとムッとしたが、ここは耐えることにした。

「俺から話していいか?」

算学が話を切り出すと思いきや、口を開いたのは瑠璃だった。どうやら算学も計算外だったらしく、ちょっと焦ってるようだ。

「その……お互いさ。勘違いしているようだから」

算学と風は何の事を言っているのか分からないようだ。

「別に風の事を”好きとかそういう事じゃないよ”」


算学は思った。(えっ? ちょっと待てちょっと待て瑠璃さん。めっちゃ匂わせてたやん。あの二人の絡みは絶対あると思ってたのに!!)


風は思った。(ちょっと待ってよ!! こん前抱きついてきたのは何? 少しアンタのこと興味や好意を持った事を返しやがれ!!)


いつの間にか外は雨や風は止み、曇り空の隙間から太陽が見えるまでになっていた。

「おい、おふくろさん!」

瑠璃の渾身のボケもスルーされ、風と算学はボケっとしてるままだ。


「そうか……じゃあ、むしろいいのか……」

算学は何とか復活して話を切り出した。

「その……こん前俺ん家で話した事なんだけどさ……」

「待てい! 俺ん家!? 風、早いだろ!!」

「早い? 何が?」

「もう親に顔を合わせたのか?」

瑠璃につっこまれた風は顔を赤くして否定した。

「違うってば!! ちょっと遊びに」

「遊び? プレイしたのか?」

「してない!!」


算学は思った。(これは普通の幼馴染の絡みなのか。プレイ?やる訳よ……でもやってみたいかも。いや、ダメダメ。なんなんだ?この2人……)


「話の続きは?」

再びボケっとしている算学に話を続けるよう、風は軽く算学の頭を叩いた。

「痛い! すまない、急に大きな声出して。話の続きをしようか」

算学が今度こそ話を続けようとすると、足音が聞こえると思うと部屋の入口のドアが開いた。


「三毛さんが目を覚ましました!」

そう言って部屋に入ってきたのは西尾染杏(にしおそあん)だった。

「弥生が!? でも…まだ昼休みだし……」

昼過ぎでまだ午後の授業があった。

「もう先生が知ってるだろうし、別に怒らないだろ。幼馴染の事だし」

瑠璃の背中を押され、後の事を瑠璃に任して風は三毛弥生(みけやよい)のいる病院へと向かった。


弥生は目を覚ました。知らない天井、知らない部屋、知らない花が置かれていた。

「頭が痛い……」

扉が開いた瞬間

「三毛さんが目覚めました!」

新人らしい看護師が急いでおそらく上司に報告に行った。

「どれくらい寝ていたんだろう?」

まだ記憶が曖昧でバイクにぶつかって、しばらく寝ていた事を後で理解した。

「風……心配してたかな?」


病院に着いた風はすぐさま弥生のいる部屋に入った。

「弥生? 弥生!?」

「うるさいよ。風」

風は弥生に抱きついた。不安だった。この数日間、ろくにご飯を食べれず、真面に授業を受ける事が出来なかった。

「痛いよ。離して」

「ごめん。でも嬉しいの。弥生がこうしてまた、私とお喋り出来る事が」

風は涙がしばらく止まらなかった。

「私もだよ。風。また一緒にくだらないお喋りしようよ」

「くだらないって酷いよ……」


心を落ち着かせて二人は瑠璃の事を話すことにした。

「瑠璃の事なんだけど」

「あれ? 下の名前で呼んでるの? なんかあった?」

「実はね。瑠璃と話したんだ。瑠璃と真剣に話したんだ。」

「そう……まさか、瑠璃って本当の事話したんだ」

「何の事?」

「瑠璃は風の事で悩んでて私に相談してきたんだ」

どうやら弥生は既に知っていたようだ。

「やっぱり風の事好きみたいだよ」

「それね。違うんだ。ただ下の名前で呼んで欲しかったみたいで。自分の口から言ったんだ」

「好きではないって?」

「まぁ……うん」

「でもそれ、ただの照れ隠しとかの可能性無いの?」

「確かに……。サラッと言ったあの感じ……ちょっと諦めた感じがあったような無かったような……」

それに染杏に瑠璃の事諦めて欲しいとも言っていた。何故だろうか。その日はその後、何時のようなくだらない話で、風と弥生の二人は盛り上がった。


夜になり、風はお決まりのベットへとインした。

「取り敢えず色々解決かな?」

弥生は目覚め、身体に害は特に無く、二日後には退院出来るみたいだった。

「まだ色々山積みだーーー!!」

「うるさい。お姉ちゃん!!」

「すいませ~ん。こん前も言われたな……」


瑠璃は破いたノートの一枚にペンを走らせていた。

「ここらへんで終わらしておくか」

季節は夏に近づいていた

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