第8話 ジェンダーフリーをぶっ飛ばせ!
「制服イケてないよね」
「えっ、カッコよくない?」
「マジそう思ってんの。大丈夫?」
一日署長で、すっかり署内で顔になっている女子高生。用もないのに署にやって来て、顔見知りの婦警さんと立ち話。友達いないのか…まあ、お嬢様学校じゃ浮くな、あれじゃ。
「なんで、もっとかわいくしないの」
「制服だからね」
「あたしだって制服だよ。でも、かわいくしようって、いろいろ努力するよ」
「スカート短くするんでしょ。あたしも高校のころやった」
「それだけじゃないよ。リボンちょっと変えたり、ブラウス微妙に違うのにしたり。上着も脇詰めるよ」
「警察官はそうはいかないわよ」
「だいたい何で普段は男の人とおんなじ格好なのよ」
「警察官だから」
「男女同権?違うか、同一労働同一賃金?」
「男女関係ないから」
「だって、体格違うじゃん。同じ格好じゃ、似合う訳ないじゃん」
「そんなこと考えたこともないな」
「通学路の交差点で交通整理してくれてんじゃない。そん時の自分の姿、鏡で見たことある」
「ないかな」
「悪いけど、コケシだよ」
「なにそれ」
「頭デカすぎ。ヘルメット大きすぎる」
「そうなの?ちょっとショックだな」
「背無いのに、あんなでっかいヘルメット被ったらダメでしょ」
「だってヘルメット被ることになってるから」
「違うのないの?ツール・ド・フランスみたいなの」
「ツール?」
「自転車乗ってる人が被ってるじゃん。なんかエバンゲリオンみたいなメット」
「ああ、あれ。なんか頼りない感じよね」
「えー、今のよりマシじゃん」
「ヘルメットはフルフェイスが基本だから」
「今被ってるのフルフェイスじゃないじゃん」
「まあ、そうだけど」
「服だって、くっらーい色でさ。もっと明るいのないの」
「そんなこと言ったって、決まったもんだしね」
「えー、テレビで見たよ。白バイ乗ってる人、ピンクっぽい制服着てたよ」
「女子駅伝の先導でしょ。あれは特別」
「なんだかなあ。やる気ないよねぇ」
「そこやる気出すとこじゃないし」
「そうかなあ。婦警さんの制服かわいかったら、あたしもなりたいって子増えると思うんだけどな」
「あんまり勧めないかな。少なくともそういう動機の子には」
「そういえばさ、なんで婦警なんだろう」
「婦人警官だから?」
「今どき『婦人』なんて言わないよ」
「あー、そうね。じゃあ、女性警察官」
「『女警』?おっかしいね。『女系』天皇みたいな感じ。あ、そうか、『JK』でいいじゃん」
「えぇー、あたしら女子高生なみってこと?」
「いいじゃん。女子高生、最高!」
「いやいやいや」
「署長さんに言っといてあげるよ。ヘルメット何とかしてって」
「え、いいよ別に。あ、でも、コケシはいやだなあ…」
それからしばらくして、マスコットのピーコロくんの相棒として女性版のピークルちゃん登場。
なんと制服はピンク。頭の上にはオレンジ色のヘルメット。それも、自転車用のちょっとおしゃれで軽いもの。もちろん県警のエンブレム入り。
「ねえ、見た見た?ピークルちゃん、ちょっとかわいくね?」
「そうね、ちょっといいかもね」
「今回はさ、なんか違う方向行っちゃたけど、署長さんに、今度こそJKの制服やメットもちゃんと変えてくれるようにマジ頼んどくから」
「いいけど、JK言うのやめてくれる」
「じゃあJP」
「何の略」
「女性ポリス」
「それ、ちょっと違う」
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