アフター

―― 数年後 ――





「みんな今週一週間お疲れさん」


「「「お疲れさまです」」」


無事に就職を果たした俺はそこそこの会社に就職した。

平々凡々なサラリーマンである。

不満が全く無いと言えば嘘になるが、上司に同僚、周りの環境には恵まれている。


「お疲れー」


「お疲れさまでした」


「明日休みってことでみんなで呑みに行こうと思ってるんだけど、天見君はどうする?」


「あー……」


チラッと視線を窓の外へと向ける。

雨脚は強くはないが、確実に降っている。

朝確認した天気予報でも今日は雨となっており、夜からの方が本降りへとなるそうだ。


「今日はやめときます」


「そっか」


それ以上しつこく誘ってこず、「用事もあるわな、また今度」と言葉を残して上司は引いてくれた。

あの人には日頃お世話になっているので、今度誘われたらちゃんと行くとしよう。

――晴れている日に。


「お先に失礼します」と、一言告げてから皆より先に会社を出る。

案の定、雨は激しくはないもののたしかに降り注いでいた。

持参した黒色の傘をさし、歩き出す前に一言だけ連絡を入れておく。


「よし、帰るか……」


雨が降っている日限定で、俺の予定は先約で埋め尽くされている。

これからもずっと、この先もずっと変わることはない。

鎖や呪縛ではない確かな意思を持って、俺、いや俺達はこの約束を守り続けるだろう。

まだなれない左手の薬指の重みを感じながら、俺は軽い足取りで帰路につくのであった。



雨の降る日はどこにもいかない ―終―

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雨の降る日はどこにもいかない じゃー @zyasyakku

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