第2話

  ホテル街のネオンに照らされる先生の横顔は、昼間蛍光灯に照らされて見る顔よりも素敵に見えた。街灯とピンク色のネオンがまだ未成年の私には新鮮で、もしも歩道から車の中の私の姿が見えた人がいるなら微かな犯罪の予感に気づいていただろう。ソープ、キャバクラ、ガールズバー。ここにあるのは可愛いのスタンプが押された女の子だけが存在できるメルヘンなんて甘い言葉とは対極な店と、恋人か営業か、もしくはお酒の勢いだけ。たくさんの言い訳付きのセックスのためだけに使う生産性のあるホテルが並んで私たちを見ていた。車のままラブホテルに入るのは初めてでわくわくした。システムが分からなかったのは先生も同じだったようで、不慣れな手つきでチェックインを進めていた。

「初めてだから手間取っちゃった。」

視線は教壇に立つときと同じで前のまま。聞こえるようにか知らないけどぽつりと呟く。授業中聞こえてくるよりもリラックスした大人の男の人の低い声が耳に入ってくる。

「これで慣れたから次は大丈夫。」

 私に向かって間延びした声をかける。先生にとってまだ次があることが嬉しくて、そんな小さなことで揺れる簡単な恋心を持ってる自分が幼すぎて。それでも顔はほころんだ。もうどうしようもないぐらい先生が好きなんだと自覚してしまう。どうにか歯止めを効かせる方法を探し出したいのに自分をコントロールすることがこんなにも難しいなんて知りたくはなかったとしみじみ思う。4月に入学した時はこんな青春送るなんて思わなかった。これじゃまるで性春だ。くだらない言葉遊びを思いついたままエレベーターの扉は閉まった。

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