三人称一人視点

 三人称一人視点は、地の文は三人称で語りながらも、ある一人の登場人物をメインとして描く方法です。カメラワークで言うなら、アナウンサーがカメラの前に立ち、実況しながら登場人物にインタビューをしていく、という感じになるでしょう。


 三人称一人視点は基本的に主人公を追うことになると思いますが、その他の登場人物の行動が追いやすく、視点変更をしてもさほど影響がないのが特徴でしょう。


【三人称一人視点のメリット】

・戦闘シーンなどで細かい描写ができる

 一人称とは異なり、注目している登場人物以外から見た描写も可能です。従って、一人称視点よりも細かな描写ができるようになります。

・中心人物がわかりやすい

 一人に視点を絞ることにより、誰の話をしているのかがわかりやすくなります。

・地の文を安定させることができる

 一人称は語り手の語彙力に合わせた文章にする必要がありましたが、三人称ではそういった必要はなく、その小説の雰囲気にあった書き方で書くことができます。これにより、地の文のブレを防ぐことができます。


【三人称一人視点のデメリット】

・誰に注目しているのか分かりにくくなる

 地の文の語り方で差別化できる一人称視点と異なり、地の文ではそのような差を付けることができません。そのため、「誰を中心として話を進めているのか」をしっかり意識しないと、誰を中心とした話なのか分かりにくくなってしまいます。

・共感性が低くなりやすい

 一人称視点では語り手の心情を事細かに描くことができましたが、三人称一人視点ではそこまで緻密な描写は難しくなります。また、視点変更も多くなりやすいため、登場人物それぞれに対する共感性はやや低くなります。


【三人称一人視点が有効な小説】

 三人称一人視点も比較的万能な方法のため、どのようなジャンルに対しても有効です。特に一人視点ではカバーが難しい戦闘シーンを、より迫力のある描写にすることができるので相性が良いといえるでしょう。


 三人称一人視点は、一人称視点ではあまりやらない方がいいと言われていることがやりやすい方法ですので、初めて小説を書く人は三人称一人視点から始めてみると良いと思います。

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