第3話
してはいけない、ダメと言われたらしたくなるのが"カリギュラ効果"というやつだ。
俺は店で買った花束を左手に持ち、昨日彼女に救われた大草原へ向かった。
目的地に着き、俺は指輪をそうびした右手を空に掲げモンスターが出るのを待った。
数十分待ったのだろうか、また誰かの叫び声が聞こえてきた。声が近づくにつれ、聞き覚えのある声だったので俺は彼女だと分かった。
「あっ!アレクじゃない、何であんたが此処に居るのよ!こんな所に居たらまた死にかけるわよ!今モンスターがこっちに向かってるわ!あんたも逃げるのよ!」彼女はスピードは早いらしく、モンスターとの距離は遠く離れていた。
とはいえ、これだけ話せば流石に近く付いてきている。
大きな体に鋭い牙を剥き出しに全力疾走で向かってくるモンスターは、俺を見たとたん足が止まった。
「ん?なんだ?動きが止まったぞ?」
俺は、とっさに指輪の力を使うべくモンスターに向かって放った。
「現出せよ!我が名はアレク、今こそ紅蓮の力よ、敵から我が身を守る為敵を破壊したまえ!」
赤の指輪から大きな光が放たれ、赤い煙のような物がモンスターの周囲を覆い、血一つ残さず姿形が消えて無くなった。
「そう言えば、君の名前聞いてなかったよね」
彼女の目が点になっていた。そして、謎の警戒され怯えるように自己紹介が始まった。
「私は...アリスよ、あんた一体何者なの?昨日は散々なめに遭ったと思えば、アレクは何処でそんな力を得たのよ!レベルは?」
俺は得意げに彼女に詳しく説明をした。
「なるほどね、それは青かったでしょ?嘴は黒だったかしら?」
昨夜俺に指輪を届けてくれた鳥の話だった。聞くと"幸せを運ぶ鳥"と言うらしい。現世で聞いたことはあったが、本当にそんな鳥が存在し幸せを運んでくれるとは思いもしなかった。
アリスの言う特徴とどれも一致していて、俺は確信した。
「ムジルリツグミっていう鳥の名前で、遭遇する確率は稀よアレクは運が良いんだね」
とはいえ、昨日と今日といい彼女の行動には何か意味や目的があるとしか思えなかった。にも関わらず屋敷の一人として彼女は、外出内容を秘密にしていた。
「ところで、アリスは此処で何をしてたんだ?そこまで隠すような事なのか?」
アリスは俺の頬を摘み、俺を睨みながら半泣きで話し始めた。
「アレク、絶対誰にも言わないって約束できる!出来なかったら死んでも許さないんだからね!」
そういって少しの沈黙の末、俺の頬を抓る手を離した。
「私はね、ずっと普通の女の子として暮らしたかったのよ、屋敷で籠るだけで怪我をすると執事やメイドが酷く心配するのよ、外へ遊ぶ事もままならなかったは、今まで騎士として私を守ってくれた人や冒険者達に感謝がしたいの、それで同じ仲間として彼らを恩返しがしたいの」
俺は想像以上の彼女の真意に俺は感激した。目から涙が流れ、それを服で拭った。
そうして俺は彼女と冒険者のパートナーとしてパーティーを組むこととなった。
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