第2話

とはいえ、俺はこの世界のことを何も知らないわけで彼女を頼る他なかった。


体が充分に動くことを確認し、俺は彼女を探すことにした。

屋敷の中は広く、俺はとにかく探し回った。すると、廊下で執事のような人を見つけた。


「あの、此処に綺麗なお嬢様は見かけなかったですか?良ければ居場所とか教えて貰えると助かります」



口角を上げ、ゆっくり俺に近ずいて穏やかな声で「あなたがアレンさんですね、お嬢様からお聞きしています。お嬢様は、今外出中てまございます夕刻にはお戻りになられるかと」


俺は、それまでの間時間を持て余した。

「あの、俺はその間何か手伝わせ貰えないでしょうか?」俺は暇つぶしがてら、考え無しにそういった。


「そうですねぇ、お嬢様からは安静にさせておくようにと言われてましたが、どうしてもとおっしゃるのであれば用事を頼まれて頂けますか?」


それは想像を越えた労働内容であった。

「ふー、疲れた~にしても、帰り遅いなぁ~」


午後からの仕事内容に、花束の調達を頼まれ花屋に出かけることになった。


「それじゃあ、行ってきます」


屋敷からは返事はない、広すぎて声が届かないのだろう。


「わぁ!」


何処からか現れたのか、居なかったはずの執事が俺の正面に立っていた。


「では、行ってきます」


「行ってらっしゃいませ、お気おつけて」


俺は、昨夜換気のため部屋の窓を開けて寝ていた時の事だった。


なにやら小さな鳥が指輪のような物を二つ床頭台の上に置いて、外へ逃げていったことがあった。


誰も見ていない事を良いことに、俺は誰のものか何処からか持ってきた物か少し不安もあったのだが、俺はそれを装備してみることにした。


能力の見方が分からなかった俺は、こういうのに詳しい人を探しに出かけたかった事もあり、花屋の仕事は俺にとって好都合なしないようだった。


早速鑑定してもらいに、店を探した。


「あの、コレを鑑定してもらいたいのでよろしくお願いします」


奥から老夫婦が出てきた。見るからに古そうな家に、ピッタリな店主が出てきた。白髭に杖を付いた女性と、なにやら強そうなオーラを放った厳つい男性だった。これは、悪い客が来た時の対策ということなのだろうか。


「あら坊や、ここらでは見ない顔だね初回ならタダで見てやるさね持ってきな」


そう言って俺は老夫婦に昨夜の指輪を手渡した。


「あんた、コレ何処で手に入れたんだい?コレは売ったら一生寝て暮らせる代物だよ、一度装備してしまったから他の人に取られても、あんたの所へ返ってしまうがね」


なにやら凄いものらしい。もし装備していなかったら言いくるめられて誰かに取られるところだった。俺は安堵の息を吐き、店主に向き直った。


「これは、外で拾って能力とか教えて貰えませんか?」


二人は驚いた目でこちらを凝視していた。後に正気に戻り、教えてくれた。


「そうだね、コレは二つで一つの代物だよ、青いのが吸収で赤いのが破壊だよ、あんた見るからに初心者冒険者って感じだけど、これは無闇に使うんじゃないぞよ」


警告か、真剣な表情で俺に指輪を渡した。最後に念押しのように、再度言われた。


「ありがとうございました、また何かあればよろしくお願いします」


そう言って、俺は深く礼をしてそこ後にした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る