雪やどんどん、霰はないない

@dukekikurage

第1話

「あんた達何時までゴロゴロしてるの」


暖かい部屋の中でゲームをしていた俺達に母は言った。こちとらそれどころじゃない。どうして親っていうのはタイミングが悪い。あと五分だけ待ってくれば、気持ち良く話も聞けるのに。


「ちょっとあとにして!」


もうラスト一周しかない。180度カーブで体ごと傾ける。設定を変えているから意味のない行動だが、癖でやってしまう。ガンガン加速をして距離を詰めるが奴のほうが速い。


「はい、ゴール!」


体を揺らしながら喜びを表す悟。俺の画面には"一位がゴールしたのでレースを終了しました"の文字。


「まーた負けた、同じマシン使ったのに」


「アイテムの使うタイミングが悪いんだよ」


勝ち誇った悟の表情に腹がたつ。

運動だったら絶対負けないのにゲームではことごとくアイツに負かされる。クラスでだって上位なのになんでだろう。


「もう一回な、コース変えて」


「はいはい、ゲームは終了。終わるまで待ったんだからこっちの番よ」


「もう始めたから聞きませんー」


画面はレースのスタート画面。コンピューターはなしで、俺と悟の一騎打ち。三、二、とスタートの合図が出される。きっちり二の終わりにアクセルを踏み込んだ。スタートダッシュは完璧だ。しかし俺のマシンが走ることはなかった


「いい加減にしろ馬鹿息子」


妖怪ケチケチオババが俺の携帯ゲーム機を取り上げた。俺の手が届かないくらい高く持ち上げて、鬼のような表情になっている。ヤバい。妖怪ヒステリックババアだ。


「お前家じゃないからって怒らないと思うなよ。悟くんの前だからって調子のって」


ピリピリする空気。悟はばつが悪いのかキョロキョロして落ち着きがない。おれば違う。こんなの何度も経験してる。こうなったら面倒くさいことは分かっていた。そしてその退場方法も。まず絶対に目を合わせない。会話もしない。

グチグチ言っても何も返事をしない。そうすれば、早ければ三十分

遅くとも三時間以内に諦めてくれる。機嫌が糞ほど悪くても、ティッシュを投げられるくらいだ。当たり所が悪ければ血が出るだろうが、それで済むなら安いものだ。


「また黙りこんで。そうやってれば逃げれるって思ってんでしょ」


だって実際に何度もこれで解決してきてるし。大人ってアタマ悪い

これで年上なんだから嫌になっちゃうよ。


「その辺にしといてよ姉さん」

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