第27話 妹キャラ卒業?

 四性天達の通う、まるでお城の様な校舎が立ち並ぶお嬢様学校。その一年生の教室で、ほむらは自分の席に座り、考え込んでいた。

 このまま妹キャラを続けていて、果たして本当にマユリのハートをゲットすることが出来るのか・・・

 否!

 おそらく不可能に近い。何故ならマユリには妹がいるということを、ある情報網から聞いてしまったからだ。実の妹がいるというのに、今さらキャラだけ妹の女の子に興味を持つわけがない。それに・・・

 自分の身体にも自信をなくしてしまう。いざマユリに押し倒され裸にされたとき、この幼児体型の身体を見られたら・・・きっと妹さんで見慣れているだろうし、ムラムラしてくれないだろう。


 どうすればいいの?


 妹キャラが染み付いてしまっているほむらが他のキャラに転身するのは、簡単なことではなかった。ほむらは考えを巡らす。そして・・・


 そうだ!あの子に相談しよう!


 ガタンと椅子を倒しながら立ち上がるほむら。

「ほむらさん、静かにしなさい!」

 国語教師がほむらを注意する。そう、今は授業中なのだ。

「すみませんでした。」

 そう言うと、ほむらはすごすごと腰を落とす。周りからはクスクスと笑い声が聞こえてきた。


 午前の授業が終わると、ほむらは一目散に隣のクラスに足を運ぶ。そして窓際の一番後ろの席に座っている、ハッとするくらいの美少女に声をかけた。

「ヒメヒメ、ちょっといいかな?」

「何だ?ほむらがオレに声かけてくるなんて珍しいな。」

 四性天の1人ヒメノ。女性らしい名前とは裏腹に、とても男っぽい女の子だ。モデルのような長身で細身の身体。髪の毛はポニーテールに結っている。黙っていれば、どこからどう見ても美少女だ。

 ほむらは、早速相談してみた。

「あのさ、ヒメヒメみたいになるのには、どうすればいいの?」

 自分とは正反対のキャラに聞けば、現状を変えられるかも知れないと思ったのだ。だが、あまりにも単刀直入過ぎて、ヒメノは目を丸くしてしまった。

「いや、どうすればって言われても、オレはオレだし。特に何か意識しているわけじゃ・・・あっ、待てよ・・・」

 何かを思いつき、ヒメノは少し考える素振りを見せる。

「強くてかっこいい女になりたいとは思ってる。大切な人を・・・マユリさんを守れるような・・・」

 遠い目で、マユリを想いながらヒメノは言った。やはりヒメノも未だ、マユリに想いを寄せているのだった。


 そっか、かっこいい女か。それもいいな。


「じゃあさ、具体的にはどうすればいいのかな?」

 更に突っ込んで聞くほむら。ヒメノは困ってしまった。一先ず、今自分が日々していることを教えることにする。

「まぁオレは筋トレしたり、食事に気を使ったり、身体のケアを怠らないようにしてるかな。」

 なるほどと納得するほむら。そこまでするからこそ、このモデル体型を維持できているわけだ。

 しかし、ほむらにはヒメノのような身長もストイックさも持ち合わせていない。

 む~っとほむらは悩む。そして決断した。


 まずは出来ることから始めよう。そうだ。手始めにいつも甘やかしてくるお兄ちゃん達を切っちゃえ。


 キャラ替えの光明が見えたほむら。

「ありがとうヒメヒメ。とっても参考になったよ!」

 手を振り、バタバタと教室を出ていくほむら。そんなほむらをヒメノは呆然と見送った。


 何だったんだ・・・


 狐につままれた思いのヒメノ。取り敢えずバックから弁当を取り出し、食べることにした。


 放課後・・・


 学校の最寄り駅近くにある大きな公園に、お兄ちゃん達を呼び出すほむら。全員は集まらなかったが、五人のお兄ちゃんが来てくれた。まぁこの人数でも取り敢えず言っておけば、後は彼等が全員に伝えてくれるだろうとほむらは勝手に思っていたのだ。なので、単刀直入に切り出す。

「お兄ちゃん達、今までありがと。ほむほむは妹を卒業します!」

 突然の爆弾発言。目を見開き驚愕するお兄ちゃん達。

「えっ、それって、俺達の中の誰かを好きになっちゃったってこと?」

 素っ頓狂なことを言い出した男。

「ん~ん。それは絶対に無いけど、もうほむほ・・・あたしはお兄ちゃん達がいらないの。だからバイバイ。」

 笑顔でひどいことを言うほむら。散々いいように使っておいて、今さらそんなことをいうのはあんまりすぎるだろう。

 勿論男達は納得できない。しかし、ほむらが冗談で言っているわけではないことはわかっていた。ほむらは本気なのだ。本気で自分達を切るつもりなのだ。

 暫しの沈黙。


 プチッ


 その沈黙を破ったのは何かの切れる音だった。

「ほむほむを殺して俺も死ぬー!」

「俺もー!」

「俺も俺もー!」

 頭の中の何かが切れた三人の男達が殺気立つ。他二人もそれに同調し、声を上げた。

「ほむらちゃんがいなきゃ生きていけない!」

「ほむらちゃん!俺達と一緒に行こう!」

 男達はほむらと無理心中を敢行するつもりだ。彼等の禍々しい負のオーラが、ほむらを包み込む。


 えっ、ほむほむ、ここで死んじゃうの?


 怯えるほむら。勿論ミカ同様、ほむらにもボディーガードはいる。しかし、今日集まったメンバーが悪かった。五人とも皆、格闘技の有段者だったのだ。いくら手練れのボディーガードであったとしても、ほむらを無傷で帰すのは難しいかもしれない。彼等の素性を知っているボディーガードは、援軍を呼ぼうとする。・・・が遅かった。男達が動き出したのだ。

「うおおおお!」

 一斉にほむら目掛けて突進する男達。

「きゃぁぁ!」

 悲鳴を上げ、目を閉じるほむら。ボディーガードは覚悟を決め、飛び出す。命だけは守らなければ・・・

 その時だった。

「あんた達!何やってんの!!」

 女性の甲高い声が公園に響き渡る。

 ビクッと身体を震わし、足を止める男達。そして一斉に声がしてきた方に目を向ける。そこには、二人の女子高生が立っていた。ハルカと・・・マユリだ。

「大の男達が女の子一人に何しようっていうの?」

 ハルカはかなり怒っている。先程声を上げたのもハルカだった。しかし、それ以上にご立腹なのはマユリだ。抑えきれない殺気が辺りに漂っている。

「あんた達。ボクのかわいい後輩に何してんの?」

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