第5話 違うの!これは・・・
今日は日曜日。
小綺麗に片付いた部屋の、フワフワのベットの上で目を覚ますマユリ。まず目にしたのは目覚まし時計だ。
8時か・・・ちょっと寝過ぎたかな。
そして、次に目にしたのは・・・昨日買った、あの下着の入った紙袋だ。ため息をつくマユリ。
あの時は思考が停止寸前だったから、どんなものかもあまり理解しないで買っちゃったけど、きっと凄いのなんだろうな。
ハルカのひきつった顔だけはよく覚えている。
でも、結構高かったし、勿体ないし、一度着てみよっかな・・・
マユリは今着ているパジャマと下着を脱ぎ、生まれたままの姿になる。そして昨日買った下着を身に付けてみた。
何これ・・・布少なすぎ!
食い込み過ぎ!
えっ、ここ開くの?
っていうか、これじゃ全然隠せてないじゃない。
これであの値段って・・・デザイン料?
いやいや、誰が喜ぶの?誰が見ても引くでしょ。
まあ少なくてもミカは大喜びに違いない。
今マユリがどの様な状態になっているかご想像にお任せするが、これでは少し動いただけでも所々モザイクがかかってしまうだろう。
慌てて部屋の厚手のカーテンを閉めるマユリ。
こんな姿誰かに見られたら、痴女だと思われちゃう。
いそいそと着替えようとしたその時、妹が勢いよくドアを開けて入ってきた。
「お姉ちゃ~ん。朝ごはんいらないの?」
!!
元気いっぱいだった妹の動きがピタリと止まる。マユリも動けない。
硬直する姉妹。
見、見られた・・・
「おねえ・・・ちゃん・・・」
大きく見開いた妹の目は、上から下に動いている。つまり、姉のあられもない姿をじっくりと観賞しているのだ。
程なくして涙ぐむ妹。
「うわ~ん!おか~さ~ん!」
たまらず部屋を飛び出していく妹。
泣きたいのはこっちだよ・・・
しかし、そうも言っていられないマユリは妹を呼び戻そうと声をかける。
「違うの!これは・・・」
だが、時すでに遅し。妹が母親に泣きついている声が聞こえてきた。
まずい・・・こんなの母親に見られたら説教される。いや、それだけならまだいい。もしかすると通報されるかも・・・
まあ、これだけの為に通報されることはないと思うのだが、今のマユリはそれだけ混乱していた。
せめて、パジャマだけでも着ておかないと・・・
急いでパジャマに手を伸ばすマユリ。しかし、思いの外時間がなかった。
「マユリ!妹に何したの!あなたらしくないわね!」
ものすごい勢いで部屋に飛び込んでくる母親。そんな母親の目に映ったのは・・・娘の痴体だった。
!!?
あわわわわっ、スッゴい顔でボクの身体見てるぅ・・・
「マユリ・・・あなた・・・」
わなわなと震え出す母親。
「だから、違うの!これは昨日後輩の子に無理やり買わされて・・・」
マユリの言い訳など聞いていないといった素振りの母親は、つかつかとそんな娘に近づいていく。そしてポンッと優しく肩に手を置いた。
どれ程恐ろしい顔をしているかと思いきや、表情は・・・穏やかな笑顔だった。
「やっと・・・やっと女の子らしくなろうと努力をし始めたのね。いいわよ。お母さん、応援してあげる。それと同じ下着、何着でも買ってあげるわ。」
予想外にも程がある。まさか喜ばれるとは・・・しかし、このまま誤解を解かなければ同じものを買われてしまう。こんなの毎日身に付けるようになったら、もうスカートなんてはけない!学校にいけない!
「ねえ、母さん。お願いだから聞いて!これは自分で欲しくて買ったものじゃないの!後輩に勧められて仕方なく・・・」
必死に説明するマユリだったが、母親は首を振る。
「いいのよ、いいのよ。わかってる。」
何もわかってない!
娘を痴女にするつもりですか?あなたは!
「でもあれね。やっぱりそれはいきなり刺激が強すぎるから、もう少しソフトなやつを買っておくわね。任せといて。」
任せられない!
何故なら、普段着ている下着が痴女レベル1だとしたら、今着ている下着は痴女レベル100だからだ。母親の言うソフトの程度はよくわからないが、もし仮に痴女レベル50~80位のものを選ばれてしまっては、やはりそれはそれで身に付けられない。いや、身に付けたくない!
この後マユリは、何とか母親を説得し、一緒に下着を見にいくことになった。しかし、その条件として、このままこの下着を着用しておくことと、少し女の子らしい服装をするように命じられる。さすがにスカートは無理だが・・・いつものボーイッシュな格好は、今日だけは封印するしかなかった。
とはいえ、何とか最悪の事態を免れたマユリ。そして着替えながら今回の件を振り返り、思う。
・・・父さんと弟に見られなくてよかった・・・特に根っからのシスコンの弟に見られたら・・・
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