第4話 ハルカとミカ
「ちょっと御手洗い行ってくるね。」
マユリは席を立ち、店の奥へと姿を消す。その隙を見計らって、ハルカはマユリを追いかけるため席を立とうとするミカに声をかけた。
「ミカちゃん。ちょっと話しておきたいことがあるんだけど。」
神妙な顔のハルカ。大事な話があるのだと察したミカは、後を追うことを諦め、正面に座り直す
「何ですか?ハルカ先輩。」
大きな目をクリクリとさせながらミカはハルカを見つめる。そのあまりの愛らしさにハルカは思わずドキッとし、顔を赤らめてしまった。
いけないいけない。平常心平常心。
また神妙な顔に戻るハルカ。
「あのさ、まだマユリのこと好きなの?」
ハルカは知っていた。ミカのマユリに対する想いを。
「はい!大好きです!もう無茶苦茶にしたいです!そしてされたいです!」
こ、この子・・・こんな可愛い顔して、何て事言うの?あたしの親友に何するつもりなの?
「あ、あのね。前から言ってるけど、マユリは男にも興味ないけど、同姓にも興味ないと思うよ。」
ちゃんと説得して分からせてあげないと。報われない恋をしていても、この子が可哀想なだけだ。
「分からないじゃないですか。可能性が1%でもあるかぎり、あたしは諦めませんよ。」
ミカはハルカの言わんとしていることを分かっていた。でも、それでも・・・他の誰かに先輩を奪われたくない!
「それに・・・ハルカ先輩、気付いてませんでした?マユリ先輩狙ってる女子は、あたしだけじゃないんですよ?」
!?
「えっ、嘘でしょ?ミカちゃん以外、そんな素振り見せた子いなかったと思うんだけど。いた?」
中学時代を振り返るハルカ。ミカはあからさまにマユリに想いを寄せていることがわかったが、他に誰が?
「はい・・・あたしは彼女たちのことを四性天って呼んでました。これでわかりましたか?」
ミカの同級生の女子四人。皆それぞれ系統は異なるが、ミカに負けず劣らずの美少女達だ。しかし・・・
ハルカには思いもよらないことだった。何故なら、彼女たちはマユリとは一定の距離を保ち、更には男の子達を下僕のように侍らせていたからだ。
「嘘・・・あの子達が?確かにミカちゃんと彼女らは何かライバルみたいな関係だったけど、根本はマユリのことでだったの?」
決してミカとあの四人は仲が悪かったわけではない。ただ、事あるごとに競いあっていたのだ。
マユリ・・・大変ね・・・
「まぁ、そうですね。ライバルと言えばそうかもしれないです。でも、あたしの本当の、一番のライバルは・・・ハルカ先輩ですけどね・・・」
ミカはハルカから視線を外し、ボソッと言う。
「へ?」
それって・・・どういう事?
「お待たせ。ん?何話してたの?」
!
不意に戻ってきたマユリは、席に着きながら二人に問いかけた。完全に不意打ちを食らった二人は口ごもる。
「あ~、さてはボクのこと話してたなぁ。なに?まさか・・・悪口じゃないよね?」
からかうような口調で、しかし少し寂しそうな様子でマユリは言う。
「何いってんの。あたしがマユリの事悪く言うわけないじゃない。中学時代の事話してたの。」
ハルカは慌てて取り繕う。
「そうですよ。愛しい人のことの悪口言うなんて・・・絶対無いです。」
うっとりした顔でマユリを見つめながら、ミカは甘えたように言う。
ぞわわわわわわっ
鳥肌が立つマユリ。おそらく男なら、キュンとして身悶えするようなことなのだろう。しかしマユリは女だ。自分の貞操を狙っている同姓にこのような表情を作られては、悪寒が走るというもの。
「ボ、ボク、もうお腹一杯・・・あっ。」
食べていたポテトを床に落としそうになるマユリ。それを寸でのところでキャッチするミカ。
「勿体ないですよぉ。お腹一杯ならあたしが食べてあげますね🖤」
美味しそうにマユリの食べかけのポテトを食べるミカ。その顔は恍惚としている。
「マユリ先輩、おいしいですぅ🖤」
言いながら指をペロッと舐めるミカ。
!!!!!!!
頭が真っ白になるマユリ。ハルカもかなり引いている。
この子・・・本当に何なのぉ・・・
マユリはこの後、ハルカがドン引きするくらいのどえらい際どい下着をミカに選ばれ、渋々買うことになってしまったとさ。
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