一話


孤児院を出てきて町をぶらぶらと歩く


あの子たちのために隠さなくては…そしてばれないように何とか用意しないと…


私はもうあの子達と一緒にいられなくなる


「最後くらい行ってあげたいな…」


そうも思って歩いていると怒鳴り声が聞こえてきた。


「おい爺さんぶつかっておいてそれはねぇんじゃねぇの?」


「じゃからわしはぶつかってなど…」


こんな昼間っからなにしてんだか…

…って私が言えたもんでもないか


私は殴られそうになっているおじいさんの間に入ってそのこぶしを受け止める

こぶしは思ったより軽くてこの男たちが雑魚なのがわかる


「おいおい…あぶねぇぞお嬢ちゃん」


「俺らのことしらねぇの?

あの有名な風見組だぜ?」


風見組って最近ぽっと出してきた

非人道で有名な…


「だから何?お年寄りいじめるてるのに任侠を掲げてるの?

極道なんて名乗ってるけどチンピラに改名でもしたらどう?」


「あぁ゛?嬢ちゃん調子のんじゃねぇぞ

殺されてぇのか?」


「お年寄りと女しかいじめられないお前らが殺す度胸なんてあんの?

だったらやってみなよ。そう簡単にはやられないから」


私はされげなくおじいさんをさがらせて殴ってくる相手を見据えて戦闘態勢に入る

こっちだって昔は剣や銃をあの子たちに教えてたし武道だってやってたからそこまで弱くねぇんだよ


殴ってきたやつの腕を引っ張り倒れさせて

私が体勢を崩したのを見てチャンスだと思ったのか迫ってくる男の顎あたりにその偏った体重を使ってけりを入れる


結果的にすぐに伸した男どもを踏みつけて耳打ちする


「弱すぎるんじゃない?こんな小娘に簡単に伸されちゃって情けなぁい

もう男辞めたら?潰してあげようか?」


耳元でくすくすと笑ってやるとわかりやすく表情を変える

そしてそのまま情けない悲鳴を上げて逃げて行った


「弱いのにいきがってるからだよヴァーカ

おじいさん大丈夫?」


「ありがとなぁ御嬢さん随分と強いんじゃな…

何かやっとったのか?」


「い、いえ…少し剣や銃を弟に教えたりとか…

あとは武道を少し齧っていてまぁ、武道はどこの師範も倒しちゃって破門になっちゃいましたし弟たちも今や才能開花させて私よりも強くなってるんですけどね」


「……ほぉ?…御嬢さんお礼がしたいのじゃ…直ぐ近くにわしの家があるどうじゃ?茶でもいっぱい…」


これは…

断っとこう

おじいさんの気持ちはありがたいが私にはやることがあるのだから…


そう思って後ろに身を引くと誰かにぶつかってしまった

そしてそのまま支えてくれているのか肩を掴まれ固定されてしまった


「おじいちゃん何してんの~?急にいなくなったりして…本家の人たち大騒ぎなんすけど」


どうやらおじいさんのお孫さんが迎えに来たらしい

よし…このままどさくさに紛れてここを立ち去ろう…


「おぉ…すまんのぉちょうどよかった今その子を招待しようとおもっとったんじゃ」


「これを…?」


初対面でこれってなんだこいつは…顔は見えないけど心底イラつくやつだな…


「そうじゃそのまま連れて行ってくれんかのぉ」


冗談じゃないこのままじゃ本当に連れてかれる


「おじいさん…ごめんね…お誘いはありがたいんどけど私やらなきゃいけないことがあるんだ…それと今私掴んでるお前さぁ…」


「…は?」


私は後ろの奴に話しかけながら肩を掴んでる腕に手をかける


「初対面の奴をこれ呼ばわりすんな!!」


?「うわぁ!!」


そして思いっきり背負い投げの要領で後ろの奴を投げ飛ばす


「初対面の人にこれ扱いはないだろ

常識わきまえやがれバーカ!!」


私はそれを捨て台詞にその場を走って逃走した

あの場にいると絶対に掴まる…


一瞬見たけどあいつの手…剣道やってるやつの手だった…

それに細身だけどしっかり筋肉ついてるし…

多分真っ向からやると絶対に勝てない…


「なんと…まさか投げ飛ばしてしまうとは…その上逃げられてしまったか…

どうじゃ?あの子は武道や剣道…しかもわしの【組】にはいない銃も扱えるものらしい。それに彼女の弟は剣と銃が天才的らしいぞ


【信乃】」


「いっつつ……う~ん俺としてはどんぴしゃだけど…

あれ…落とせるかなぁ…


むりっぽそ」


「それはお前さんががんばらねばあの子を頼むから嫁として連れてきてくれ

もうお前さんの候補はいないんじゃ…」


「はいはい…がんばります。確かあの子は同じクラスの生徒だ…

名前は確か未紬香凛…学校一の不良少女だ」


走り去っていく香凛の背中を見て、信乃と呼ばれた少年はにやりと笑った。

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