69話 この上なく尊き神の軍勢。


 69話 この上なく尊き神の軍勢。


「……こ、怖いな……」


 『890000号』が、ボソっと、本音を口にした。


 そんな彼のトイメンで、

 ゼノリカの面々は、シャドーを睨みつつも、

 自分の中に刻まれた『センエースの覚悟』を確かめていた。


 分かる。

 理解できる。


 自分たちは、センエースから多くをもらった。

 命だけではない。

 それと同じぐらい大切なものを、たくさんもらった。


 どれだけの時間と忠誠を注いでも、

 返しきれるものではないと思った。


 その理解が届くと同時、

 センに対して、

 『ヒドい神だ』と思ったりもした。


 こんなにも『膨大な借金』を押し付けてくるとは、

 なんと鬼畜な神なのか、

 と、まるで、ファントムトークのような軽やかさで、

 センに対する文句を頭の中で飼いならす。


 ただの敬意ではない、

 本格的な愛情で無意識がパンパンになる。



 ――この日、ゼノリカは、神を知った。



 だから、飛べる。

 これまでとは比べ物にならないくらい、

 高く、高く、高く!!


 この場にいる、

 すべての命が、

 爆音の大合唱!






「「「~「「「プライマル……

      プラチナ……

       スペシャルゥウウ!!!」」」~」」」






 異常な光景だった。

 本来、『凶悪なスペシャル』が『目覚める』という覚醒は、

 超々々稀に、かつ、単体にのみ起こりうる奇跡の輝き。


 それなのに、

 今、この場では、

 数百人という、ありえない規模で、

 一斉に『プライマルプラチナ』の覚醒が起こった。


 ――ゼノリカの面々に刻まれた可能性、それは、

 プライマルプラチナスペシャル『この上なく尊き魂の系譜』。


 これは、センエースが有する究極のプラチナスペシャル『絶対的精神的支柱』が真の力を発揮した結果。


 センエースの愛と献身に寄り添う事で、

 この場にいるゼノリカ全員が光り輝く。


 神の後光を背負い、狂気の存在感を世界に魅せつける。



 ――目覚めたゼノリカを見て、

 『890000号』が、今にも泣きそうな顔で、


「これが……絶対的精神的支柱の、真なる力……この上なく尊き魂の系譜……」


 ボソっと、そうつぶやく。


 目の前で魅せつけられた『890000号』は、

 『この上なく尊き魂の系譜』の異常性がダイレクトに理解できた。


 これは、反則。

 これは、禁則。


「これは……やりすぎだろぉ……さすがによぉ……」


 あまりにも大きすぎる輝きを前にして、

 『890000号』は、その場にへたりこんだ。


(……センエースの愛と献身が……そのまま、こいつらの力となり……逆に、こいつらの愛と献身が、そのままセンエースの力となる……愛が深ければ深いほど、信仰の度合が強ければ強いほど……センエースとこいつらは、車輪のように……並行して加速し続ける……)


 ゼノリカは、数分前までとは別物となった。

 顔つきからして、全然違った。

 何かを悟った顔をしている。

 晴々(はればれ)としていて、深みを感じさせる。

 誰もが、『高次の覚悟』を心に抱いているのが見てとれた。

 ゼノリカは、軍として、史上最高の高みに至った。

 これまでのゼノリカも『たいがい優秀』だったが、

 ここからのゼノリカは優秀とかいうレベルではなくなる。


 神に支えられ、

 神を支える群(むれ)。


 魂魄の深部で繋がった家族。


 ――彼らゼノリカは、神の軍勢。

 神の王が誇る、最強の狂信者集団。

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