58話 敵が、えげつないほど、どんどん強くなっていく……


 58話 敵が、えげつないほど、どんどん強くなっていく……


 ――それから、センは、また、何度も繰り返していく。

 同じ地獄、同じ苦痛、同じ絶望。


 違う点があるとすれば、

 出現する神話生物が、

 毎回、少しずつ強くなっていること。


 センの成長に合わせて、

 危険度が的確に上がっていく。


 どれだけセンが強くなっても、

 しっかりと並走してくるものだから、

 毎回、毎回、ギリギリの死闘を演じなければいけない。


 これが、しんどい。

 とにかくキツい。


(なんか、動きのバリエーションまで増えてやがる……)


 強化ロイガーと何度も戦ったことで、

 ロイガーの呼吸を掴みかけてきたセン。

 しかし、ある程度、掴みかけたと思ったタイミングで、

 敵の動きにテコ入れが入る。


(動きのバリエーションだけじゃなく、数値の方も、俺が、こいつを『殺し慣れる』にしたがって増えている……)


 敵のGOOは、回数を重ねるたびに、『その時のセンエースが苦労しなければ倒せない』というレベルに整っていく。

 なので、毎回、センはキッチリ苦労している。

 毎回、毎回、血反吐を吐きながら、

 一日一日を積み重ねていく。


「いや、しんどいな……いやいや、これは、しんどいっ……っ」


 作業ゲーが許されない、無限の地獄。

 『ただ繰り返す』のではなく、『永続的に最善を求めて集中力を研ぎ澄ませ続ける』という『神経質な積み重ね』を経なければいけない。


 これが、センエースは苦手だった。

 センは『脳死作業ゲーを永遠に繰り返せる』という特異な資質なら、世界最高水準で常時搭載しているのだが、しかし、『神経質な積み重ね』の方は普通に苦手だった。


 『ド根性がある』と、

 『集中力がある』という二つは、

 まったくもって別の次元の話。


 例えば、千羽鶴。

 『雑でもいいから、鶴を一日20時間、100年折り続ける』

 というのは、セン的に、とっても得意な愚行なのだが


 『少しでも折り目にズレがあったらダメな鶴を一日5時間5年間折り続ける』というのは、とっても苦手。


 もし、どちらか選ばなければいけないとなった時、

 ――センは、キラキラとしたまっすぐな目で前者を選ぶ。


 センエースはそういう人間である。

 イカれたド根性の脳筋ブッパプレイでしか物事を見られないド変態。

 それが、センエース。


 とはいえ、後者が『できない』のではない。

 これは『どちらの方が性に合っているか』という話。


 『やらざるをえない』という枕がついた時、

 センは、歯を食いしばって、

 異次元の集中力を見せる。



「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」



 極限の集中力を必要とする作業を、

 メンタルがズタズタになるループの中で、

 延々に繰り返し続けるという、

 非常にハイレベルな地獄。


(回数を重ねるごとに、敵の火力が増していく……動きのバリエーションとかは、微妙なパワーアップだが、火力と圧力に関しては、異常な速度で上がっていく……まだ、ワンミスでは死なないが……これ、おそらく、あと数十回ほど繰り返せば、ワンパンで死ぬレベルになるぞ……)

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