47話 犯沢さん?!
47話 犯沢さん?!
「――『残り物には福がある』なんて言葉があるが……コレ、誰が言い始めたんだろうねぇ。残っているものを選んで福があったこととか、これまでの人生で、特になかったけどなぁ」
ブツブツ言いながら、
センは残っている道を進む。
魔法の光で淡く輝いている道。
けれど、霧のようなものが立ち込めているため、
『道の先』はあまり見えない不思議な仕様。
落とし穴などのワナに気を張りつつ、
ゆっくりと前に進んでいくセン。
五分ほど歩いたところで、
「……おぉ、ゲートかぁ……怖いねぇ」
『このダンジョンに来るとき』にも使った『転移用のゲートっぽいもの』が目の前に開かれていた。
「このゲートの先に、ガッツリとワナが待っている可能性大だが……ま、行くしかねぇわなぁ」
とっくに『くくっていた腹』を、さらに『くくりなおして』から、
センは、勢いよくゲートをくぐった。
――その先には、
「ようこそ、無謀な挑戦者よ」
『名探偵コ〇ンの犯人』みたいな、
全身真っ黒で、三白眼とニヤけた口が特徴的な、
例の『黒い人』みたいなのが待っていた。
「私はオメガシャドー。『殺戮と破壊の化身になりたかった』が『なれなかった』という、どこにでもいる『平均的一般成人男性』だ」
「……見た目と自己紹介の内容だけを見る限り、とても一般人とは思えないが……というか、人なのか?」
「いや、カテゴリ的にはモンスター枠だ。より正確に言うと、『シャドー枠』だな」
「……そうですか……ちょっと何いっているかわかんないけど」
センは、警戒しつつも、
オメガシャドーの言葉を軽く流しつつ、
「で? あんたが出合い頭にかましてきた、『ようこそ、無謀な挑戦者』っていうのは、どういうこと? 最初に言っておくけど、俺は、常々、『出来れば、無謀なコトには挑戦したくない』と思って生きているんだけど?」
「今から、君には、『とある化け物』と戦ってもらう。かなり強い化け物だから、死ぬ可能性は非常に高い。しかし、君は、そんな危機的状況に対し『へのつっぱりはいらんですよ』と胸を張って声高に叫んでいる。なんという、無謀な挑戦者であろうか」
「言ってねぇよ。人様の言動を捏造すんな」
半眼で訂正していくセン。
そんな彼の言葉をシカトして、オメガシャドーは、たんたんと続ける。
「そんな君の『図抜けた愚かさ』には歪んだ狂気を感じる反面、どこかで、その『ハンパではない勇気』に、一抹の敬意を感じてしまう……こんな私のアンビバレントが、君に理解できるかね?」
「……はい、人の話を聞かないパターン。なんで、俺って、ちょいちょい、こういうヤツとエンカウントしちゃうんだろう……悲しいなぁ」
「余計な戯言はいらない。さっさとはじめよう。君は、これから地獄を見る。君ごときでは、決して超えられない壁を思い知る。命のやり取りの中で、君の心はヘシ折れ、無様に命乞いをするだろう。しかし、私は耳を貸さない。君は、ただ、地獄のカマの底で、己の不運を叫ぶ。君は――」
「さっさとはじめようって言っておきながら、そこから先の御託が長ぇな……」
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