73話 はじめての強化パーツ。

 73話 はじめての強化パーツ。


 ・黒木に説明、

 ・ロイガー撃破、

 ・茶柱に説明、

 と、面倒なステップを踏んで、

 ようやく、ウムル戦まで戻ってきたセン。


(ノーダメージ勝利は絶対にダメ、ノーダメージ勝利は絶対にダメ)


 と、心の中で、呪文のように繰り返しながら戦闘開始。


 センは、初手に、正面からダッシュをかますという、

 相手からした『100%謎の自爆行動』をとった。


 ノーダメージ勝利をおそれるあまり、

 突飛な行動をしてしまったセン。


 反射的にカウンターを決めたウムルは、


「っ?! ……なんだ? なにがしたい? まるで、殴られにきたかのような……」


 その言葉に対し、

 センは、ニっと微笑んで、

 あふれ出た鼻血を右腕でふきとりながら、


「殴られたかったんだよ……これで、ノーダメ―ジじゃねぇ」


「……はぁ? 貴様、もしかして、頭がおかしいのか?」


「もしかしなくとも、完全に頭はおかしいよ」


 そう言ってから、武をかまえなおして、


「さぁて、それじゃあ、本番をはじめようか……いくぞ、ウムル=ラト。殺してやる」


 その後は普通に闘い、

 結果的には、ほぼノーダメージで勝利した。


 一応、念のため、戦闘中に、何度か、

 『楽に避けられる攻撃』にも『あたっておく』、

 という徹底ぶりをみせつけた上での勝利。



「……異常事態は……起きないな……よし」



 ウムルを殺してから、

 しばらくは、緊張状態を保って、

 周囲を観察していたが、

 10分ほど経過したところで、

 『大丈夫だろう』と胸をなでおろし、


「……さて……それじゃあ、念願のアイテム探索を開始しようか……」


 言いながら、センは、黒木に電話をかけた。




 ★




 ――黒木の協力を得て、アイテム探索を開始し、

 10分ほど経ったところで、


「あ、ありましたよ」


 廊下にぽつんと落ちていた宝箱を発見。


(……開けた瞬間に、『紅院が異空間に飛ばされます』……みたいなクソ展開にならないだろうな……)


 などと、疑心暗鬼になりつつも、

 センは、宝箱を開けてみた。

 すると、


「……? カード?」


 中には、花札サイズの小さな『カード的な何か』があった。


 横から、宝箱の中を覗き込んだ黒木が、


「ああ、これは普通の『強化チップ』ですね」


 言いながら、

 自身の携帯ドラゴンで、

 強化チップをサーチすると、


「……『攻撃力を強化するチップ』の『小』ですね。攻撃力上昇値は2パーセント程度です」


「……2パーセントというのは、良い方なのか?」


「強化パーツの上昇率は、だいたい、2~3パーセントぐらいですね。たまに、5~6パーセントぐらい上昇するチップも見つかります」


「……50個ぐらい見つけたら、ようやく火力が倍になる感じか……」


 そうつぶやきながら、

 センは、図虚空の『火力の低さ』を思い出し、


(……『種族値ポ〇ポ』みたいな攻撃力が、たかが2パーセント上昇したところでなぁ……)


 ため息をはさんでから、


(……そもそも、この強化チップとやらは、図虚空に使えるのかね……『携帯ドラゴン専用』で、他のマジックアイテムを強化することはできません……みたいな感じだったら、ウザいな……)


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