74話 微々たる強化。

 74話 微々たる強化。


(この強化チップとやらは、図虚空に使えるのかね……)


 などと、心の中でつぶやきつつ、

 センは、黒木に、


「わるいが、これは俺がもらうぞ」


「私よりも、あなたを強くする方が合理的ですので、当然です」


「……理解力が高くて助かるよ。ところで、この強化チップってのは、どう使うんだ?」


「携帯ドラゴンに使う場合は、食べさせる感じなのですが……あなたは、ナイフに使用するつもりなんですよね? ……だとすると……ちょっと、見当もつきませんね」


「……ふむ……」


 センは、コンマ数秒だけ悩んだが、

 とりあえず、

 図虚空を召喚し、


「よし、喰え」


 と、無茶な命令を出してみた。

 なかば『ツッコミ待ちの発言』だったのだが、



「了解、ヒーロー」



 図虚空は、返事をした直後、

 刀身部分がガバっと、龍の口のような形に変形し、

 強化チップを、ペロっと丸のみにしてしまった。



「……うわー……きもーい」



「自分で命令しておいて、キモいとは、これいかに」


「いや、まあ、うん、そうなんだけどね……」




 0000000000000000000000000000000


 『図虚空』


 《アイテムクオリティ》 【2】

 《コアマテリアルランク》【2】

 《シンクロ率》     【1%】

 《装備者への愛》    【1】


 [HP]        【+12】

 [MP]        【+19】


 「攻撃力」       【+2(強化値2%)】

 「魔法攻撃力」     【+1】

 「防御力」       【+16】

 「魔法防御力」     【+18】

 「敏捷性」       【+1】

 「耐性値」       【+32】



 付与『ゼノ・サイコジョーカー』

   『シルバーキーサーチ』


 1111111111111111111111111111111




 ★




(……強化アイテムが図虚空にも使える、というのは、まあ良かったが……しかし、もともとのスペックが低すぎるから、『焼け石に水』感がいなめない……)



 さきほど発見した『攻撃力チップ小』を軸にして未来を考えた場合、

 仮に、『100個』見つけたとしても、

 図虚空の攻撃力は『6』になるだけ。


 『出来の悪いペーパーナイフ』が、

 『ちょっといい感じのペーパーナイフ』になる。

 という程度の強化でしかなく、

 当然だが、戦力アップを感じるほどではない。 


 そこで、センは、

 黒木に、


「強化パーツってのは、『パーセンテージで上昇するチップ』しかないのか?」


「いいえ。基礎パラメータが『5上昇』などの直接数値で上昇する強化チップもありますよ」


 計算式で言うと、

 『基礎パラメータ+基礎強化』に『強化パーセンテージ』が加わる感じ。


 仮に、図虚空へ

 『攻撃力+100』と『攻撃力+5パーセント』の二つを食べさせた場合、


 『2+100』の『5パーセント上昇』=『107』となる。



「……なら、併用していけば、元々がカスでも、ある程度は、ちゃんと強くできるか……」


 そうつぶやいてから、天を仰ぎ、


「とはいえ、気が遠くなる話なのは変わらねぇ……」


 ため息をつきつつ、頭の中で、計算するセン。


(……アイテム探索のペースは、この感じだと、おそらく、『1時間に一個』見つかれば上等……夜の時間を全て探索に使ったとしても、せいぜい、一日10個前後が限界……)


 アイテム強化の値が低すぎるため、

 10個程度だと、ほんのわずかしか強くなれない。

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