45話 オメガ・トランスフォーム。

 45話 オメガ・トランスフォーム。


「きゅいっ」


 オメガに呼び出された『手乗りサイズのドラゴン』は、

 パタパタと小さな翼をはためかせ、ゆっくりと飛び上がり、


 オメガの頭の上にポスンと着地すると、

 子猫のように、クルンと小さく丸くなって、

 スースーと寝息をたてはじめた。



「おいおい……ウチの携帯ドラゴン、なんで、そんなナチュラルかつ完璧に俺を裏切ってんだ?」



「お前よりも、俺の方がいい男だからだろう」


「モブ感が強いお前よりも、俺の方が、キャラ力は上だと思うがねぇ」


「センエース。お前はアレだな。『キャラが立っていればいいってわけじゃない』っていう『いい見本』だな」


「……」


「……」


 無意味な皮肉を言い合ってから、

 『数秒の重たい無言』を経て、

 オメガは、


「ルナ! 起きろ!」


 命じると、

 頭の上で寝ているルナが、


「っ、きゅいっ!」


 パっと、飛び起きる。

 軽くアクビをはさみながらも、

 腕を伸ばすストレッチをしつつ、戦闘準備を整える。


「遊びは無しだ。最初からフルスロットルで行くぞ! ――オメガ・トランスフォーム! モード・アウターゴッド/レベル1000!」


 宣言した瞬間、ルナが強く発光し、細かな粒子へと崩壊していく。

 輝きは拡散し、収束して、気付いた時には、余す事なく、その全てが、オメガの体を包みこんでいた。


 ほんの一秒弱で、オメガの体は、白銀のオーラを放つ龍化外骨格で包まれていた。


 顔の部分だけが出ている兜の額には、ブレードアンテナのような下弦の月。

 月光の淡い輝きをモチーフとした究極の一品。


 ――そんな美しい鎧をまとうオメガの姿を見て、


「エグいな……」


 センは、素直な感想をこぼす。


「伝わってくる……お前が積み重ねてきたもの……その重さ……」


 冷や汗が流れた。

 恐怖は感じていない。

 しかし、畏怖は覚えた。


「……積み重ねてきた覚悟だけで言えば、俺こそがブッチギリで最強だと、どこかでうぬぼれていたが……お前には……勝っているかどうか微妙だな……」


「お前の方が上だよ、センエース。積み重ねてきた覚悟だけで言えば、俺もそれなりに自信があるが……しかし、お前には勝てる気がしない。俺は俺のことで精一杯だった。しかし、お前は『全部』を背負ってきた」


 そう言いながら、

 オメガは、自分のオーラを、さらに高めていく。


「魔皇ドライブ起動。両腕リミッター、解除。カオスインフィニッター接続」


 オメガを包む魔力とオーラが膨れ上がる。

 リミッターを解除した瞬間、両腕部分がガチャガチャっと変形していき、より混沌としたフォルムへと変身する。

 そして、両腕に接続された、身の丈ほどもある巨大なガトリングガンブレイド。

 膨大なカオスシェルを撃ちだせる殺戮兵器『カオスインフィニッター』の二丁装備。


「ホロウユニバース‐システム発動。ナイトメア・ユニット、オープン。我が身を守れ、マキシマイズ・ドリームオーラ」


 あらゆる攻撃の貫通値を数倍に跳ねあげるシステムを発動させ、

 飛行制御性能を爆発的に上昇させるユニットを広げ、

 ほとんど無敵になれる防御壁を展開させる。

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