44話 世界一の美少女とイチャイチャすること。

 44話 世界一の美少女とイチャイチャすること。


「で? その要件とは?」


 じっくりと時間をかけながら、

 センは『戦闘前のセオリー』を積んでいく。


 ぶっちゃけ、『オメガの話』に興味はない。

 ただ、相手の『手』を読もうと必死。


 目線、呼吸、一挙手一投足から、

 敵のセオリーをトレースし、

 最善手を模索する。


 そんなセンに対し、

 オメガは、まっすぐに、


「まずは、世界征服だな」


 と、用件を伝える。


「ダイナミックだな。『まず』を枕においていいクエストじゃねぇ」


「そして、神を殺してもらいたい」


「……どのランクの神を想定しているかによって、だいぶ印象が変わるお願いだな。表層の神を殺すミッションと、ソンキーを殺すミッションでは、次元が8桁違う」


「ついでに、全宇宙の運命を調律してもらいたい」


「そいつは、間違いなく、『ついで』で頼んでいい代物じゃねぇ」


「そして、これが、最も重要な用件だが……」


「まだあるのかよ。まるでブラック企業のノルマみてぇだな」


 センの感想を聞き流しつつ、

 オメガは、

 そこで、一拍を置いてから、

 ド真剣な目で、




「世界一の美少女と、全力でイチャイチャしてもらいたい」




「……また、随分と、テイストが変わったな。支離滅裂すぎて、話にならねぇ」


 呆れ交じりの感想を口にするセンに、


 ただ、しかし、オメガは、

 一ミリも冗談っぽさを出さずに、

 バカみたいにド真剣な表情のまま、



「ちなみに、どの用件が一番ムズかしそうだ?」



 と、そんな質問を投げかけてきた。


 センは、オメガの目を見る。

 まっすぐな目だった。


 おどろくほど。

 あきれるほど。


 だからこそ、


「――最後のミッションだ。他のとは次元が8桁以上違う」


「同意見だぜ」


「ケンカ売ってんのか?」


「いや、同情しているだけだ」


「一番キツイな」


 『中見があるのかないのかイマイチわからない会話』を終えると、

 両者そろって、一気にオーラと魔力を解放する。


 『最後のアリア・ギアス』によって、

 両者を包み込む空間は、

 恐ろしく強固になっているが、

 しかし、それでも、衝動を吸収しきれず、

 ブルブルと震えている。


 ――と、そこで、センは、


「ところで、現状、神化は解放されているようだが、携帯ドラゴンの方は使えねぇ……これは仕様か? それともバグか?」


「いや、バグじゃねぇよ。そして、仕様でもない」


「? じゃあ、どういう――」


「単純な話さ。『現状、ルナの使用権は俺にある』というそれだけの話さ」


 そう言うと、

 オメガは、




「淡い輝きの結晶。いと美しき、月光の携帯ドラゴン、起動。……おいで……ルナ」




 その宣言に呼応するように、銀色の粒子が結集して、


「きゅいっ」


 かわいらしい、手乗りサイズで二頭身のドラゴンが現れた。

 パタパタと小さな翼をはためかせ、ゆっくりと飛び上がり、オメガの頭の上にポスンと着地すると、子猫のように、クルンと小さく丸くなって、スースーと寝息をたてはじめた。


「おいおい……ウチの携帯ドラゴン、なんで、そんなナチュラルかつ完璧に俺を裏切ってんだ?」


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