41話 最後のアリア・ギアス。

 41話 最後のアリア・ギアス。


「大事な女を三人も奪われていて、ノンキを通せるほど、俺は男をやめてねぇ。今の俺は、マジでブチ切れている……それを踏まえて返答しろ」


 究極超神センエースは、オーラを解放し、

 バキバキの圧力をかけながら、


「――俺の女を、とっとと返せ。殺すぞ」


 常人なら、

 一瞬で意識が飛んでしまうであろう、

 エゲツないほど豪快な胆力。


 それほどの凶悪な覇気を受けていながら、

 『男』は、ニィっと柔らかく微笑んで、


「取り返してみろよ。この上なく尊き神の王センエースならば、俺からあいつらを奪い返すくらい楽勝だろ?」


 しっかりと挑発をかましていく。


「……」


 その『根っこがシッカリとした挑発』を受けたことで、

 センは、

 逆に、冷静になった。


 『冴えわたる』というほどではないが、

 頭の中がシンと静かになって、

 視界が少しだけ広くなる。

 だから、


「……テメェ、誰だ?」


「ああ、自己紹介がまだだったな。俺はクトゥルフ・オメガバスティオンという」


「……クトゥルフって名前は、聞いたことがあるが、後半は『初めまして』だな。お前はアレか? クトゥルフの亜種的なやつか? それとも、クトゥルフの本名が、そのオメガなんとかなのか?」


「オメガバスティオンという概念が、クトゥルフという観念を借りている――というのが、俺の状態だ」


「一ミリも意味がわからねぇ。結局、お前は誰だ?」




「俺は、運命を殺す狂気の具現。永き時空を旅した敗北者。月光の龍神クトゥルフ・オメガバスティオン」




「……どこかで聞いたことがあるキャッチフレーズだな。というか、ぶっちゃけ、そいつは、俺が最近、使い始めたニューキャッチコピーだ。……これは、偶然か? それとも、何かしらの運命か?」


「くく……偶然だったら、面白いよな。あまりにもかぶりすぎていて、さすがに、笑えるぜ」


「……」


「けど、まあ、……結局のところは偶然だよ。そんなもんだ、運命なんて」


 そう言うと、

 オメガは、天を仰いで、


「これで、すべての条件が整った」


 そうつぶやくと、


 そこで、オメガのオーラが、淡く瞬いて、




「――強者は華。堅陣な魂魄は土――」




 ゆらゆらと、

 光が強くなって、






「――最後のアリア・ギアス発動――」






 宣言の直後、

 オメガの圧力がグっと深くなった。


 と、同時に、空間の質が大きく変化した。

 『隔離された』と一瞬で理解できる変化。



 それを受け、センは、


「……審判じゃなく最後……か。色々と意味不明だな。つぅか、『最後のアリア・ギアス』って……だいぶ、ヤバそうだな。まさか、『もう、今後、誰もアリア・ギアスを使えません』とか、そういう感じじゃないだろうな」


「心配するな。ここでいう『最後』は、あくまでも記号、表題……あるいは命題。――つまるところ『ファイナ〇ファンタジー』くらいの意味でしかない」


「……そうなると、逆に『永遠に終わらなそうな豪胆さ』を感じるな……」


 などと、言葉を並べつつ、

 心の中では、


(俺のことを知っているだけではなく、第一アルファのゲームタイトルまで知っているのか……こいつは、どう考えても、ただのコスモゾーン・レリックじゃないな)

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