31話 詭弁。

 31話 詭弁。


「俺の行動に『問題がある』と提起したかったら、好きなだけすればいい。何を想い、何を口にするか、そこに関しては、誰だって常に自由だ。――ただ、ちゃんと言っておくが、俺は、他者の意見を気にしない。何を言われても俺は俺の意見を変えない。どんな時、どんな状況であれ、俺は俺を通し続ける」


 究極超神センエースは、

 『絶対に揺るがない』という意思を示してから、


「それら全部を踏まえた上で、もう一度だけ言ってやろう。今のお前を裁いているのは、お前自身の罪だ」


「……詭弁だ……しょせんは、お前の魔法でしかない……お前が魔法を解除すれば、それで終わる話……私に苦痛を与えているのは、お前だ!」


「別に、そう思いたければ、そう思ってくれていいよ。お前の意見とか、どうでもいいからね。『俺が俺のワガママを通すかどうか』という極めて局所的な領域の話において、お前の許可など一ミリたりとも必要ない」


 どんな言葉をぶつけても、

 決して揺れることなく、

 徹底して飄々としているセンに、


 ――クリミアは続けて、


「あの扉の中で受ける苦痛は、私が他者に与えてきた痛みだと言ったな! 私はすでに、それを8回も受けている! 私は、貴様の判断だと、罪人か知らんが……貴様は、私の8倍は罪深いクズ野郎だ!」


「いや、そうはならないだろ。反省したら解放されると言っているのに、まったく反省の意を示さないお前が悪い。もう一度言うが、お前は罪なき者をいたぶった。その罰を受けているのが現状。ようするに、前提がまったく違う。論点をすり替えるな」


「詭弁だ! それも! すべて詭弁!」


「だから、どう思ってくれてもいいって。お前の意見なんか知らん。お前が、明らかに間違ったことをほざいた時は、『何言ってんだ、バカが』と反論も出来るが、お前の、『どうでもいい意見』を連呼されても、挨拶に困る」


 センは揺るがない。


 『センエース』を支えている器は、

 クリミアごときに揺るがせるほど小さくないから。


 そこでセンは、

 ブレることなく、まっすぐに、

 クリミアを睨みつけ、


「というかさぁ、お前って、今まで、ずっと、『気に入らないこと』を、全て、『理不尽な暴力』で解決してきたクチだろ? 相手が対話を求めてきても、理不尽に切り捨てて、身勝手な意見を押し付けてきたんだろ? そんなお前が、この場においてだけ、議論を求めてこようとするなよ。俺のやり方が気に入らないなら、殴り掛かってこい。別に『俺に対して攻撃できないようにしている』ってワケでも何でもないんだからよぉ」


「……」


「なに、ビビってんだよ。まだ、俺自身からは、右ストレート一発しかくらってないのに、なんで、完璧に戦意喪失してんだ」


「……っ……ぐぅ……」


「言っておくが、このまま『及び腰のまま』だと、テメェには『自分の不完全さを嘆く資格』すらねぇぞ」


 センは、クリミアの心に剣を刺す。

 それは慈悲のようにも見えたが、

 実際のところは、ただの煽り。


「テメェみたいなカスにも、積んできたものはあるだろ? せめて、最後くらい、派手に暴れてみせろ。最後の意地を見せるのであれば、特別に、罪だけではなく『絶望の数え方』も教えてやるよ」

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