8話 カモン、ベイベっ!

 8話 カモン、ベイベっ!




「道理のままに死ねぇ!! 異次元砲ぉおおおおお!!」




 先ほどよりも、はるかに膨大な火力を誇る異次元砲が、

 カンツの全身に降り注ぐ。

 絶対的なオーラの収束を、その身に浴びていながら、

 しかし、カンツは、


「いいねぇ!」


 当然のように、ケロっとしていた。


 ――意味不明に全快したカンツは、ニっと不敵に微笑み、


「お前の魔力量とオーラ量がハンパないことはよくわかった!さて、それじゃあ、次は、戦闘力を見ていこうか!」


 そう言いながら、カンツは、ハンドガンを消して、

 両手をフリーにすると、

 数回、ピョンピョンとジャンプしてから、

 シャドーをしつつ、


「カモン、ベイベっ! さあ、好きに殴り掛かってきな!」


「……な、なんなんだ……貴様は……」


「おののいているヒマはないぞ! あ、そうだ、ここらでいいことを教えておいてやろうか? ワシにロックオンされたら、基本的に、終わりだぞ! ワシはしつこさはハンパじゃないからなぁ! がはははははは!」


 豪快に笑ってから、


「どうした?! こないのか?! せっかく先手を譲ってやっているというのに、ずいぶんと殊勝なやつだな! 気に入った! ウソだけど!」


 などと言いつつ、

 カンツは、豪速の踏み込みで、

 ニョグタとの距離を詰めると、


「おらおらおらおらおらおらぁ!! がははははぁ!」


 ボッコボコにぶん殴っていく。


「うげぇ! ごぁ! ぐぇ! ぼえぇ!」


 粗雑に見えて、実は、なかなか、一発一発が鋭い。

 スパっと肉を裂く。

 ガツンと骨まで届く。


「どうだ! ワシの拳は重いだろう! なぜ、ここまで重いか分かるか?! ちなみに、ワシにはわからん! 基本的に、ワシはワシを理解していない! どうだ、愉快な話だろう?! なぁ?! がはははははは!」


 まるで、酔っ払いの戯言。

 カンツの発言は、基本的に、フワフワしている。


 地に足がついていない冗談の集合体。

 けれど、そのスペックは正式に破格。


 栄えあるゼノリカの天上、

 九華十傑の第十席序列14位、

 カンツ・ソーヨーシ。


「んー、やっぱり、戦闘力は微妙になるなぁ! というか、ハッキリ言って弱すぎる!」


「がはっ……ごほっ……」


「お前も、現状は、すでに理解できているだろう? ワシは基本無敵! その上、戦闘力も、遥かに上! こうなったら、もはや、貴様に勝ち目などない! さあ、どうする?! ここからが大事だ! ここから『どんな答え』を出すかで、貴様の価値が決まる! さあ、さあ、どうする? ワシという絶望を前にして、貴様は何を想う?!」


 カンツの問いかけに対し、

 ニョグタは、


「……はぁ……はぁ……なるほど……」


 『理解』をしめした。

 まっすぐな目で、

 カンツを睨みつけ、



「……貴様がセンエースか……」



 と、そんな、ズレた言葉を口にした。


「この圧倒的な力……これは、まさに王の力……貴様が……神の王……」


 ニョグタから飛び出た『想定外の回答』を耳にしたカンツは、

 普通に首をかしげて、


「……いや、ちがいますけど?」


 と、疑問符だけを口にする。


「ワシはカンツだと言っとろうが……というか、貴様、なぜ、『センエース』を知っている? 事前調査の結果によると、この世界に、『センエース』という偶像の伝承はないはず」

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