52話 いろいろとダメな人。

 52話 いろいろとダメな人。


「実は、ここ一年ほど、私たちは、ザコーさんに、一度も会っていないのです。ごくたまぁに、電話やメールはくるのですが、それっきりで」


「えぇ? じゃあ、ゴキとしての活動はぁ? ザコーくんいなかったら、いろいろと、面倒なんじゃない? 全宮家と、ちゃんとつながっていたのは、ザコーくんだけだったしぃ」


「今は、ブラツクーロさんがリーダー代理をしていますよ。ただ、お察しのとおり、彼では、色々と問題がありましてねぇ。彼自身にもいろいろと問題はあるのですが、一番の問題は、彼の指示を、我々が『重視していない』という点ですねぇ」


 頭をぽりぽりとかきながら、


「別に、彼のことが嫌いなわけではないのですが、彼には、ザコーくんと違い、カリスマ性がないので、どうも、『命令を聞く気がおきない』んですよねぇ。例えば、命令で『今回のミッションでは殺しを控えろ』と言われても、現場で、『こいつ殺したいなぁ』と思ってしまったら、『殺すなって言われたなぁ……でも、ま、いっか』となって、ついつい殺しちゃうんですよねぇ。いやはや、困ったものです」


「あー、わかるなぁ。私も、ブラくんの命令は聞く気が起きないからねぇ」


「あなたは、ザコーさんの指示も、たいして聞いていなかったじゃないですか」


「そんなことないよぉ。たまには聞いていたよぉ」


「ほかの面々は、ザコーさんの言葉なら、すべて、ちゃんと聞いているのですよ。『我々のような頭おかしい連中のまとめ役』という、非常に、クソ面倒くさい仕事を一身に担ってくれている彼に、我々は、全員、心から感謝している。あなたは、その辺の敬意が足りない。だから、みんなから嫌われているのです」


「人間性うんぬんでモノを言うのなら、私よりも、アプくんの方が、いろいろとヤバくなぁい?」


「ええ、アプソロさんは終わっていますよ。けれど、あなたの方が、ハッキリ上ですね」


 などと、和やかに話している二人を、

 普通に緊張した面持ちで見つめている、

 ロコ・ケムス・ゲン・ボーレの四人。


 アモンとIR3は、

 涼しい顔をしているが、

 いつでも動き出せるように心の準備だけは万端。


 そんな、

 軽くピリついている現場で、

 ヤマトとチャバスチャンは、

 会話を続ける。



「ところで、今日は何をしに我が家へいらっしゃったのですか?」



「チャバくん家の地下金庫にある金目のモノを盗みにきたんだよぉ」


「……ストレートですね。実に『ヤマトさんらしい』というか、なんというか」


 チャバスチャンはタメ息まじりに、


「家を荒らされるのはゴメンなので、地下金庫には近づかないでもらえますか?」


「それは、聞けない頼みだねぇ。なんせ、こっちも、命がかかっているからねぇ」


「金庫に入れていた金品のいくつかを、玄関に置いてあります。それをテキトーに持っていってください。全宮ルルには、盗まれたと報告しておきますので」


「あれぇ? もしかして、私たちがくるって知ってたぁ?」


「ブラツクーロさんから聞きました。『何も聞いていないことにして、テキトーに演技をするように』と指示を受けましたよ」

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