48話 それでは、金目のものを盗みにいこうか。

 48話 それでは、金目のものを盗みにいこうか。


(たしか、遺跡ダンジョンの最奥には、コスモゾーン・レリックがあるんだっけ?)


(らしいわね。詳しいことは伏せられていたけれど、シアエガと同等クラスのコスモゾーン・レリックって話らしいわ。この前、報告を受けた段階で、すでに、7個は回収したって話だったから、今はもっと増えているかもね)


 遺跡ダンジョンで発見したコスモゾーン・レリックは、

 すべて、『GOO(グレートオールドワン)』級。

 ただでさえ、強力なゼノリカの戦力が、

 日に日に、膨張しているのが現状。


(僕も、できれば、遺跡調査の方に参加したかったなぁ……こんな、しょっぱい仕事よりも、絶対、そっちの方が『評価』を稼げるよ。ああ、あの時、判断ミスを犯してさえいなかったら、遺跡探索メンバーに加われる可能性もなくはなかった……そこで成果を示せれば、あるいは、上に上がれるという可能性もあったのに……くっそぉ……)


 当時の失敗を思い出して奥歯をかみしめるアモン。


 そんなアモンに、


(……『九華が完璧なバランスでパーティを組んでいるから楽勝でクリアできている』というだけで、実際、メチャクチャ強力なモンスターが大量に沸いて出る危険なダンジョンみたいだから、天下がパーティに組まれることはないと思うわよ)


(自分を基準に物事を考えるなよ。僕は、将来、間違いなく十席に名を連ねる本物の天才。未来を見据えて『今のうちに経験を積ませておこう』と考えてもらえる可能性はゼロじゃなかった)


(……まあ、どんな願望を思い描こうと、個人の自由だから、好きにしてくれればいいけれど……)




 ★




 午前中にすべて準備を整えて、

 さっそく、その日の夕方、

 新たにケムスを迎え入れた龍試委員会のメンバー『7人』は、

 ゴキのメンバーの一人である『チャバスチャン』のアジトへと向かった。


 全宮家の権限で、車を出してもらい、

 運転手は、パシリのパシリであるボーレが担当。


 見渡しのいい広い道を、

 一定のスピードで走り抜けていく車内で、

 ケムスから、


「いきなり、『龍委に入れ』と命じられ、その流れのまま、『ゴキのチャバスチャンにケンカを売りにいくからついてこい』と強制連行……人使いの粗さがハンパじゃないですね、ロコ様」


 怨み節を言われて、

 ロコは、


「ゴキを相手にする以上、戦力は出来るだけ底上げしておきたかったのよ」


「……チャバスチャンと言ったら、『イカれたヤツしかいないゴキ』の中でも、トップクラスのサイコパスだって噂の変態じゃないですか……そんなのを敵に回して、大丈夫なんですか?」


「何一つ大丈夫とは言えないわね。確実に、ややこしいことになるわ」


「……はぁ」


 深いため息をつくケムス。

 この一年、ゲンと鍛錬を続けたことで、

 爆発的な成長を見せたケムス。


 彼女は、間違いなく強くなったが、

 しかし、ゴキのメンバーを殲滅できる力があるかと言えば、

 決して、そういうわけではない。


 まだまだ、ケムスは、ヤマト以下の剣士。

 真正面から、剣のみのルールで闘ったとしても、

 『ザコー』や『ブラツクーロ』に勝てるかどうかわからない、

 という、その程度でしかない。

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