49話 チャバスチャンとヤマトの関係。

 49話 チャバスチャンとヤマトの関係。


 まだまだ、ケムスは、ヤマト以下の剣士。

 真正面から、剣のみのルールで闘ったとしても、

 『ザコー』や『ブラツクーロ』に勝てるかどうかわからない、

 という、その程度でしかない。


 ここに関しては、ケムスが弱いのではなく、

 ゴキのメンバーが、あまりにも強すぎる。


 ケムスは、しぶい顔で、


「僕とロコ様とヤマトとゲンがいるこのメンバーなら、単純な殺し合いの場合、ほぼほぼ負けることはないでしょうけど……今回のような、『相手を殺してはいけない』という、限定ルールがある場合、なかなか、予想通りの結末に持っていくのは困難」



 こんかいの試験内容は『ステルスミッション』。

 チャバスチャンを殺すことが目的ではなく、

 金目のものを盗んでくることが目的。


 また、ゴキと全宮家は、裏で繋がっているため、

 ゴキに大きな被害を与えることは許されていない。

 よって、『チャバスチャンを殺してはいけない』というのは、

 今ミッションにおける、明確なルール。


「潜入して、金目のものを盗んで、それが成功したのちに、チャバスチャンと、本試験についての話し合い……もうムチャクチャですよ。『世界最高クラスのサイコパスと噂のチャバスチャン』でも、さすがに、『こいつら、頭おかしい』って呆れ果てると思いますよ」


 と、そこで、

 運転席のボーレが、


「俺たちのイカレ方を面白がってくれたら、ありがたいんだけどなぁ……」


 ボソっとこぼしたその言葉に、

 ヤマトが、


「面白がるとは思うけどぉ、だからって、『こっちにとって都合のいい対応』をしてくれるとは思わない方がいいねぇ。チャバくんは、性格悪いからねぇ」


 窓の外に顔を出して、

 流れる風を感じながら、

 そうつぶやいた。


 その発言に対し、

 ボーレは、


「……あの、この際、聞いちゃいますけど、ヤマトさんって、やっぱり、ゴキのヤマトなんですか?」


「違うよぉ。今の僕は、ロコ様の配下で、ゲンくんの相棒。それ以上でも、それ以下でもない、純粋な美少女だよぉ」


「今のってことは……前はゴキのヤマトだったんですか?」


「そういう時期もあったかもねぇ」


「……」


 名前と、実力と、年齢と、容姿、

 その辺から、学内では、


 『Sクラスのヤマトって、ゴキのヤマトじゃね?』

 『ヤマトって男じゃないの?』

 『ゴキが、学校に通うわけねぇだろ』

 『えー、でもぉ』


 的な感じで噂にはなっていたが、

 ヤマトは、近寄りがたい存在――

 というか、素のオーラが怖すぎて近寄りたくない存在なので、

 誰も、

 『あなたは、ゴキのヤマトですか?』

 という質問を投げかける者はいなかった。


 ボーレも、

 『そうじゃないかなぁ』とは思いつつも、

 別に、確証を得たからといって、

 なにか得になるわけでもないので、

 今まではスルーしてきたが、


「……あの、じゃあ、チャバスチャンとも知り合いですよね? どうにか、間に立ってもらうとかできません?」


「チャバくんは、私のこと嫌いだからねぇ。むしろ、私がいることで、変にこじれるかもねぇ、あははぁ」


 と、快活に笑うヤマトに対し、

 ゲンが、渋い顔で、


「なに、ワロてんねん」


 と、心底からの言葉を投げかける。

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