26話 ロコの毒。

 26話 ロコの毒。


 アモンの『状態異常耐性』が、どうかというと、

 『毒に対する耐性』は、さほど高い方ではない。


 『弱点』というわけではないが、

 毒に強いわけでもない。


 もちろん、状態異常に対する事前対処なら、

 ある程度は出来ている。


 『普通の毒』なら、アイテム等で、

 ある程度は、対処可能――なのだが、


(こいつの毒……ほんと、ちょっと、性能がエグすぎる)


 ロコの毒は、

 純粋な威力と貫通力を兼ね備えた、

 非常にパワフルな、神経毒と腐食毒のハイブリット。


 人体の細胞を変性させるだけでなく、

 物質を腐らせることも可能という有能ぶり。


(……間違いなく、毒の質を高める『高ランクのスペシャル』を有している……ブルースリー……いや、このレベルとなると、さすがに、ゴールドクラスかな……)


 状態異常特化ビルドを組む者は、

 大概、特定の状態異常を強化するスペシャルを保有している。


 ロコも、当然、

 『毒の威力が上がる』

 『毒の付与率が上がる』

 『毒魔法の消費MPが下がる』

 といった類(たぐい)のスペシャルを保有している。


 その大半がゴールドスペシャル。

 ゆえに、よほど毒耐性が高い者でないと、

 ロコの毒魔法を軽視することは出来ない。




「毒毒毒霧(どくどくどくむ)ランク16」




 ロコは、手を休めることなく、

 ひたすらに、毒を巻き続ける。


 毒のバリアを張り、

 毒の霧をまき散らし、


 距離を詰められたら、

 『毒撃』や『龍毒』でカウンター。


 肉弾接近戦特化のアモンからすれば、

 正直、相性が非常に悪い相手。


(軽く毒がまわってきたな……まあ、これだけ広範囲に撒き散らされたら、さすがに、完全回避は不可能……)


 もはや、ここら一帯が『毒フィールド状態』になっている。

 吸い込みすぎないよう、呼吸には注意しているが、

 『完全にシャットアウトすること』は流石に出来ない。


(わずかに力が入りづらくなってきた……筋弛緩系の毒……最終的には動けなくなるタイプ……いや、『動けなくなる前に終わらせないとマズイ』と焦ってしまえば、その精神的ストレスによって、むしろ毒のまわりがはやくなる、という悪循環に陥るタイプかな……)


 毒が回り切る前に、近距離戦で、

 冷静に、短期決戦を仕掛けようとしても、


(体技も、決して悪くない。それなりの戦闘力……これが全宮ロコ。五大家の人間)


 アモンの猛攻に対して、

 ロコは、常に適切な距離を保ち、

 合気道の要領で、アモンの攻撃をさばいていく。


 ロコの技量では、アモンのすべてを完璧にさばくことは出来ないが、

 反撃を一切考えず、ただひたすらに、守りに徹すれば、

 瞬殺されることはありえない。


(本気を出さなくても、普通の『殴り合い』なら、僕が、この女に負けることは絶対にありえない……けれど、『丁寧に前提を整えられてしまった上での殺し合い』となると、本気を出したとしても、削り切られる可能性はゼロじゃない)


 アモンの目測は完璧に正しい。

 間違いなく、戦闘力はアモンの方が上だが、

 しかし、地形や陣形などを考慮した、

 『簡単には崩せない状況』を整えられて、

 その上で、現在のように、堅(けん)に徹せられると、

 押し切られてしまう可能性はある。


 現状は『ほぼ真っ向勝負』であり、

 戦闘力に絶対的な差があるので、

 毒がまわり切る前に、確定で、削り切れるが、


 ――『実戦』ではどうなるかわからない。


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