25話 危険度は『C+』。

 25話 危険度は『C+』。


 『ロコがアモンを抑えている間に、

  IR3を高速で処理する』

 ――それがゲンのプラン。


 『後衛型の、しかも自分の【主人】を、肉壁に使う』という、

 主従関係に対する反骨精神がハンパない少年。

 それがゲン・フォース。


(右ストレートでぶっとばす。まっすぐいってぶっとばす)


 『脳筋全開』の勢いで、

 ゲンは、

 IR3に踏み込んでいく。


 全力でオーラをぶち込んだ右手を、


「――幻拳――」


 思いっきり突き出すと、


「――っ?!」


 IR3の体が霞のように消えた。


 と、思った直後、



「――速度はかなりのモノ。けれど、動きが直線的だから、反応できないほどではない。危険度は『C+』と判定。装備を変更する」



 採点しつつ、

 IR3は、アイテムボックスから、

 『明らかに氷属性が付与されているっぽい双剣』を取り出し、


「破格に機敏だけれど、猛獣の暴走を彷彿とさせるムーブ。ハッキリ言って、諸々スキだらけ。氷結属性で、スピードに制限をかけていけば容易に対処可能と推測。戦闘プランを確定。――ヒットアンドアウェイでジックリ削る――」


 そう宣言してから、

 しっかりと実行にうつすIR3。


 ゲンの特攻を軽やかに回避して、

 細かなスキをチクチクとついてくる。



(クソが……俺の全部を的確に処理しやがって……モンハンのモンスター側になった気分だぜ)



 ゲンとIR3が闘っている間、

 その向こうで、

 ロコとアモンも、激闘を繰り広げていた。


「龍毒ランク18!!」


「おっと」


 ロコの毒魔法を、

 ギリギリのところで回避しつつ、

 距離をつめ、



「豪魔拳ランク15」



強力な拳を叩き込もうとして、

 しかし、


「魔毒壁ランク17!!」


 鬱陶しい毒バリアを張られてしまい、

 途中で、


「――ちっ」


 拳を引っ込めるアモン。


(めちゃめちゃ偏差値高い毒だな……『毒の使い手』は、これまでの人生で、死ぬほど見てきたけど……これだけ、高品質の毒を扱う術者には、あまり会ったことがない)


 百済だけではなく、楽連にも、

 毒をメインにしている者は少なくない。


 毒ビルドは、ある程度マスターすれば『格上』が相手でも、

 一矢報いることができる、非常に有用な手段。


 下手をすれば、自分の毒に、自分がやられる、

 というケースもあるので、お手軽戦術ではないが。


(……毒の質だけで言えば、百済のインディゴ級……いや、バイオレット級かも……)



 ちなみに、百済の階級は以下の通り。


 インフラレッド(最弱)。

 レッド。

 オレンジ。

 イエロー。

 グリーン。

 ブルー。

 インディゴ。

 バイオレット。

 ウルトラバイオレット(最強)。



 ――アモンは、いったん息をつこうと、足に力を籠める。

 安全な距離を確保してから、


(エゲつないほど高品質な毒を扱える資質……そんな『自身の強み』を徹底的に活かすカウンター毒ビルド。無駄を省いた、合理的構築。……なかなか、美しいね……)


 状態異常の耐性値は、人それぞれ。

 混乱が効きにくい者、

 マヒが効きやすい者、

 さまざま。


 アモンの『状態異常耐性』が、どうかというと、

 『毒に対する耐性』は、さほど高い方ではない。


 『弱点』というわけではないが、

 毒に強いわけでもない。

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