7話 P型の物語。
7話 P型の物語。
「P型とかいう『異常レベルで壊れたバケモノ』の討伐経緯……楽連の武士として知っておきたかったけど、天上が本気で情報を閉鎖したら、暴くのは絶対に不可能。だから途中で、みんな情報収集を諦めた。……どうせ、あんたに聞いても、まともには教えてくれないんだろ?」
アモンは、そう前を置いたうえで、
けれど、ほんの少しだけ期待した目で、
「けど、まあ、一応、ダメ元で聞いておこうか。P型って、どうだったの? 『飛び交っている噂』のどこまでが本当?」
「すべて」
「……P型の噂が全部事実だとしたら、勝てるわけがないと思うのだけれど? いったい、どうやって倒したっていうの?」
「無限に強くなり続けるP型を、この上なく尊き神が、究極の最果てを魅せつけることで、美しく裁いた。それが、それだけが事実。真理と言ってもいい」
IR3の電波発言に対し、
アモンは、心底ガッカリした顔で、
「……やっぱり、ね……はぁ」
そう言いつつ、深いタメ息をついてから、
「なんで、P型についての情報って、そんな『超極秘扱い』されてんの? 『神様が倒しました――となったら、もう何も言えないよね、だから、もう聞かないでね』……みたいな、そのノリ……なんか、怖いんだけど。ヤバいことが起きてるわけじゃないのよね?」
「誰も何も隠していない。誰も信じないだけ。起きたことをありのままに話しているのに、謎の深読みをして、天下だけが変に混乱している。それが現状の全部」
「いや、あのさ……」
しんどそうな顔で、
再度、ため息をついてから、
「じゃあ、マジレスするけど……永遠に蘇生し続けて無限に強くなり続けるバケモノなんてものが実際に存在するとして、そんなもん、どうやって倒すっていうの? 前提からして間違っているんですけどぉ? 『存在値1000の壊れたモンスター10000体』を『一人で倒した』っていう冗談も大概ふざけていると思うけど、P型に関してはそれ以上だ」
『まともな人間』が聖典を読めば、
感想は『こんな嘘八百、ガキでも信じねぇよ』の一言に収束される。
それが世間の常識であり真理。
そんな『冗談の集合体』である聖典よりも、
『嘘の質』で言えば、『P型のおとぎ話』の方がヒドい。
「P型は、最終的に、九華と五聖と三至が、全員で束になっても敵わないほど強くなった。全員で束になってかかって、どうにか殺せたとしても、すぐに蘇生してしまう。――けど、そんなP型を、神帝陛下は、その圧倒的な覇気だけで、戦うこともなく、平伏させてしまいました」
これが、P型の物語。
ゼノリカで飛び交っている噂。
「……このヨタ話を『信じろ』って方が『無理ある』ってことが、どうしてわからないのかと、本気で不思議に思うよ。昔からずっと言われていることだけれど、嘘をつくなら、もう少し、マシな嘘をついてくれ」
「私もかつては、聖典を信じていなかった。けれど、神は本当に美しかった……」
あの日の事を思い出し、
IR3の体に深い熱がともる。
今でも鮮明に、魂に刻み込まれている。
神の光。
神の暖かさ。
わずかも色あせることなく、
今も、IR3の心を満たしている。
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