6話 P型という、おとぎ話。

 6話 P型という、おとぎ話。


「あなたの才能は嫉妬に値する。あなたは強い。けれど、まだまだ底が浅いガキであることも事実。そして、現状の私は、あなたのお目付け役。あなたに対して敬意を払うことは、やぶさかでもないけれど、監査官としての仕事をおろそかにする気は、さらさらない」


 IR3の『頑なな態度』を受けて、

 アモンは、

 ジットリとした『湿度の高い怒り』を孕んだ顔になり、



「……あんた、この前、ゼノリカを襲撃してきた『P型』とかいう『奇妙なバケモノ』と戦って惨敗したんだってね。何もできずに飛ばされたって聞いたよ」



「……なに、急に? それが?」


「僕のお目付け役なんて言っているが、実は、左遷されただけじゃないの?」


「……」


「僕は、ミスを犯したが、負けたワケじゃない。経験不足で判断ミスをおかしただけ。僕は、まだまだ、これから咲くツボミ。だから、チャンスはいくらでもある。けど、あんたは違う。すでに、ある程度、存在値も戦闘力もビルドも完成している」


「で? 結論は? 何が言いたい?」


「あんたは神族にはなれない。一生、闇人形として使いっパシリ確定」


「……」


「あんたと違い、僕は、確実に神族になれる。その差をちゃんと理解しろよ。崇め奉れとは言わないけれど、見下すのはやめろ。あんたごときに見下されるほど、僕は安くない」


 ピリっとした空気が流れた。

 思想とプライドをぶつけ合う舌戦。


 ――その間も、試験はたんたんと進んでいる。


 80人目が叩き潰される。

 そして、十秒後には、また、次の挑戦者がつぶされる。


 そんな風景を横目に、

 IR3は、


「……一つ、聞いていい?」


「……なんだよ?」


「あなたは、『P型』について、どこまで聞いている?」


「……噂レベルでしか聞いていないよ。何が起こったのか、詳しく知っておきたかったら、色々と話を聞いてみたけど、なんだか、『聖典みたい』な『わけわかんない誇大妄想の噂』ばかりが飛び交っていて、さっぱり要領をえなかった」


「……聖典みたい……か。ちなみに、ザっとでいいから、あなたが聞いた話を教えてくれる?」


「P型は、自動蘇生スキルをもっていて、何度殺しても死ななかった。その上、殺すたびに、どんどん強くなった。三至すら勝てなかったけれど、最後には、神帝陛下が倒してくれました。……みたいな感じ。楽連一同、まとめて全員ポカーンだよ。おそらく、『なんらかの理由』で『情報統制された』が故(ゆえ)の噂だと思うんだけど……それにしても、酷いと思う」


 ちなみに、天下の視点で、現状を語るなら、


 ・よくわからん世界(原初の世界)を調べろと命じられた。

 ・なんかよくわからん敵(P型)の奇襲を受けたっぽい。

 ・気づけば、謎の世界(真・第一アルファ)に飛ばされて閉じ込められた。

 ・また一から、世界調査開始。

 ・なに、この状況。最近、ずっと、ワケわからん。

 ・↑今ココ


 ――という、さっぱり要領をえない状態。


「P型とかいう『異常レベルで壊れたバケモノ』の討伐経緯……楽連の武士として知っておきたかったけど、天上が本気で情報を閉鎖したら、暴くのは絶対に不可能。だから途中で、みんな情報収集を諦めた。……どうせ、あんたに聞いても、まともには教えてくれないんだろ?」

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