73話 三分間待ってやる。

 73話 三分間待ってやる。


「ケムス。あんたが、それなりに強くて助かったよ。おかげで、インフラレッドも召喚できた。こいつは、敵が存在値300を超えている相手じゃないと召喚できないんでね。あ、ちなみに、こいつは、インフラレッド・インフェルノという炎系のブレスが使える。気をつけろよ」


(暴露を積まれた……ということは、まだ何かあるのか……)


 と、考えている途中で、

 ゲンは、ニっと笑い、




「暴露のアリア・ギアスと、覇鬼と、ワンダーナイトを生贄にささげ……『ネオ・ヘルズ覇鬼』を召喚!!」




(ネオ・ヘルズ覇鬼?! ちょ、超王級のモンスター?!)


 真・第一アルファの一部地域では、

 上級・最上級のモンスターが、

 結構な頻度でポンポンと沸く場所も存在する。


 しかし、さすがに『王級』や『超王級』はなかなかお目にかかれない。



「どうだ、俺の力は! すげぇだろ! ハンパないだろ! ぐはははははは!」



(ドラゴンに超王級モンスター……確かに尋常ではないけれど……すべて、金の力だろうが、このクソバカ成金が……)


 ――超王級モンスターを召喚できるアイテムなど、

   いったい、どこで買えるのだろうか?

   ありえなくないか?


 そんな疑問が頭をよぎったものの、

 しかし、『召喚系の成績』が『中の下』でしかないゲンが、

 『自力』で超王級を召喚することなど『絶対にありえない』、

 と、きわめて常識的な理解ができているため、

 どうしても『金の力』という結論に行きつく他ない。


「ケムス! 凶悪なモンスターに囲まれて大変だな! だが、自業自得だ! お前は俺をバカにした! その報いを受けるがいい! 絶望の底で跪(ひざまず)け! そして、命乞いをしろ! 三分間待ってやる!」


 と、美しく調子こいていると、


 ケムスは、


「君ごときに全力を出すなど、プライドの問題でありえない……けど、ほんの少しだけ、僕の『実力の一端』を見せるぐらいならば、許される状況だと判断する……」


 ボソっとそうつぶやき、


 ギラリと目を光らせて、

 オーラと魔力を圧縮させ、




「――会心・双列斬ランク19――」




 先ほどの様子見の空斬とは次元の違う、

 尖った殺意の込められた『凶悪な魔法』を放った。


 その結果、

 ラムドアイズ・インフラレッドドラゴンと、

 ネオ・ヘルズ覇鬼、

 両者の首が、スパっと切れて、

 どちらも、バタリと地に伏せた。


 その様子を見たゲンは、

 目を丸くして、



「どぇええええええ?!」



 と、無様に叫ぶしかなかった。


 そんなみっともなさ全開のゲンに、

 ケムスは、ニっと笑って、


「これほどの戦力を有しているという点に関しては、確かに驚いた。しかし、僕を超えているかとなれば、話は別だ」


 ――少しだけ、ケムスについて解説すると、

 ケムスのビルドは『超高火力の一撃必殺型』であり、

 『特定の条件(無数にある)』を積んだ状態であれば、

 自分より弱い相手を一撃で『殺す』ことも可能という、

 いわばアサシンスタイル。

 (超王級が相手でも、条件次第では一撃で殺すことも『可能』なビルドというだけであって、『いつでも超王級を一撃で殺せる』というわけではない。『必殺』が通らなかった場合、当然、超王級を倒すのには、めちゃくちゃな時間と体力を浪費することになる)


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