72話 ゲン・フォースの軍勢。

 72話 ゲン・フォースの軍勢。


(上級の怪鳥種……どうして、そんなレアモンスターを使役できる……)


 頭の中が、グルグルとまわる。

 情報を整理していく。


(さっきのカード……あれは魔カードではない……おそらく召喚専用の特殊なアーティファクトだろうが、今まで見たことがない代物……)


 アイテム創りには無限の可能性がある。

 『召喚のみを追求した魔カードタイプの特殊アイテム』があってもおかしくはない。


(あの妙に質の高い魔剣といい、召喚用のアイテムといい、ずいぶんと羽振りがいいじゃないか……)


 と、そこで、ケムスは、

 以前、ロコから聞いた話を思い出す。

 大して重要な話でもなかったため、今まで忘れていたが、


(そういえば、ロコ様は、アギト様と賭けをして、大金を手に入れたと言っていたな……その分け前を、このガキにも与えたと言っていたような気がする……)


 理解に到ると、

 ケムスは、

 ハンッと、鼻で笑って、


「金で買った力を振りかざして、嬉しげに『秘密兵器だなんだ』と喚き散らすバカガキ……滑稽だな。『早熟の秀才』ですらない、単なる、頭と性根が腐ったアホガキ……話にならない」


 そう言いつつ、

 ケムスは、剣を構えて、


「飛べたところで虫は虫だ」


 魔力を充満させて、


「――『空斬ランク10』――」


 魔法で、斬撃を飛ばす。

 高威力の飛斬が、ゲンを襲うが、


「あらよっと」


 ゲンは、高速で飛翔する斬撃をサクっと回避していく。


(はっ……こちとら、アホみたいに強い『ヘルズ覇鬼』との死闘を200回以上くりかえした経験値があるんだ。様子見の空斬なんか当たるかよ)


 レーザーファルコンの次のフロアに登場したのが、

 ヘルズ覇鬼だった。


 レーザーファルコンを使って飛翔するゲンを、

 高ランクの跳空斬でバンバン撃ち落とそうとしてくるヘルズ覇鬼と、

 バカみたいに何度も何度も戦い続けた結果、

 ゲンは、高度な飛行技術を手に入れることに成功した。


 ――そんなゲンの様子を見て、

 ケムスは、ギリっと奥歯をかみしめ、


(練度の高い飛行……それなりの訓練を経ている様子……鬱陶しいな……)



「ケムス! これで終わりだと思うなよ!」



 そう叫ぶと、

 ゲンは、おかわりのラムドカードを取り出して、



「覇鬼、召喚! ワンダーナイト、召喚!」



 どんどんと戦力を投入していくゲン。


 高位のモンスターに囲まれたケムスは、


(……いったい、いくら使ったんだ、このガキ……)


 軽く冷や汗を流しながらも、

 しかし、冷静に、


(だが、この程度のモンスターの群れは、どうとでも――)


 対処できると思ったと同時、

 ゲンが、さらに、


「マイティコア、召喚! バンシー、召喚!!」


 セイバーとの戦闘後に獲得した『二体のモンスター』を召喚し、

 そして、



「マイティコアと、バンシーを生贄にささげ、ラムドアイズ・インフラレッドドラゴン、召喚!」



「ど、ドラゴンまで?!」



「あんたが、それなりに強くて助かったよ。おかげで、インフラレッドも召喚できた。こいつは、敵が存在値300を超えている相手じゃないと召喚できないんでね。あ、ちなみに、こいつは、インフラレッド・インフェルノという炎系のブレスが使える。気をつけろよ」



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