74話 世界を変えるには。

 74話 世界を変えるには。


 ケムスのビルドは『超高火力の一撃必殺型』。

 『特定の条件(無数にある)』を積んだ状態であれば、

 自分より弱い相手を一撃で『殺す』ことも可能という、

 いわばアサシンスタイル。


 決して『暗殺者を目指している』というワケではないのだが、

 『先天的な特質』の問題上、その構成以外はありえなかった。


 ケムスのビルドは、

 融通がきかない『必殺型』であるため、

 『殺してはいけない』という状況下だと、

 取れる戦術が大幅に減ってしまう。

 (減るだけで、ゼロになるわけではない)


 そのため、学校の『模擬戦闘テスト』なんかでは、

 実力を最大限発揮することが出来ず、

 成績的には少し落ちてしまうのだが、

 そもそものスペックがハンパではないため、

 対人用の龍試や鬼試であっても通るだけなら余裕だった。

 (――『最強火力』を出そうと思えば『殺すこと』が前提になるが、『殺してはいけない戦闘』で『苦労』するほど『戦術パターンが少ない』というわけではない。というか、そこまでバカではない。ケムスは、その辺も考えた上で、自分を磨いてきた)



 ちなみに、いうまでもないが、

 モンスター討伐の試験などでは、

 当然のように、最高峰の成績をかっさらっていく。

 『試験で狩ってきたモンスターの質』だけでいえば、

 ケムスは、歴代の『全宮家の血族』と比べても大差ない。



「全宮学園Sクラスのトップ層にして、世界最強の特殊部隊クリムゾンスターズからスカウトされている『本物の天才』であるこの僕を……ナメるなよ、クソガキ」



 『なんの裏打ちもないプライド』を抱えて生きている者は少ない。


 『何も持たないのにプライドだけは一丁前』という『おバカさん』も、

 まあ、たまには……

 いや、実のところ『結構な頻度』で存在するわけだが、

 しかし、ケムスはそっち系ではない。


 彼女のプライドには、明確な理由がある。


「……そ、そんなやつが、なんで、ロコ様の派閥なんかに……わざわざ、反骨精神をむき出しにしなくても、人生楽勝だろうに」


 そんなゲンの発言に対し、

 ケムスは、


「世界を変えようと思ったら、出世する必要があるが、既存組織の『上』は詰まっている。クリムゾンスターズに入れば、名誉は得られるだろうけど、それ以上の未来は望めないだろう」


 ケムスは天才で優秀だが、

 しかし、クリムゾンスターズには、

 彼女クラスの天才がゴロゴロいる。


「どれだけ頑張っても『上に体(てい)よく扱われる優秀な番犬』で終わるだけ。本気で世界に風穴を開けようと思えば、新興組織の中核に食い込むのがベターだと判断した。それだけの話さ」


 少しだけ補足すると、

 ケムスもロコも『めちゃくちゃ大きな枠』で区分すると、

 どちらも『アサシンタイプ(毒や必殺がメインの型)』になる。

 別に、どちらも『暗殺者を目指している』というわけではないが、

 ビルドの特性上、どうしても、そういうカテゴリ分けになってしまう。


 『同カテゴリの相手』に対しては親近感を覚える事が多い。

 だから、ケムスは、ロコの側についた――という側面もなくはない。


 ちなみに、同カテゴリの相手に対し、

 『親近感を覚える』というケースもあるが、

 『同族嫌悪に陥る』というパターンも往々にしてある。


 人間関係は千差万別、十人十色。


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