9話 もっと不思議。

 9話 もっと不思議。


「もし、俺の知っている通りの『もっと不思議』だと、いつでもどこでも、サクっと事故死してしまうアルティメットなデスロードなんだけど……ここも、その手のヤベぇ感じなのかな?」



 『もっと不思議』というパワーワードに、

 『当然の不安』を覚えずにいられないゲン。


 どうしたものかと悩んでいると、

 そこで、ビビっと音がして、

 異次元に穴があいた。


「な、なんだ、なんだ」


 警戒していると、

 その穴から、

 ペッ……と、

 『スーファミ時代の説明書サイズの書物』が出てきた。


「摩訶不思議アドベンチャーのバーゲンセールだな」


 などとつぶやきながら、

 ゲンはその説明書を手に取り、パラパラとめくる。


「ふむ……『持ち込み』はありなのか……」


 この説明書には、『チョコネコのもっと不思議な館』に関する説明が書かれており、


「レベルが1になるわけでも、落ちているアイテムが未識別というわけでもないと……はん、それで『もっと不思議』を名乗るとは片腹痛いねぇ」


 などと、しょうもない感想を口にするゲン。


「……ただ、出てくるモンスターは、存在値50オーバーの本格的なバケモノばかり……か」


 ゲンの存在値は、虹気と剣術のおかげで、

 低レベルではあるものの、

 なんとか、50前後には達している。


(タイマンで、慎重にコトを運べば、存在値50クラスのモンスターが相手でも、どうにか勝てるとは思うが……)


 存在値50が相手なら『絶対に勝てない』とは思わない。

 しかし、5~6体に囲まれたら終了。

 タイマンであっても、相手が『状態異常を連発してくる面倒なタイプ』だった場合、対応力不足で落ちる場合もある。


 『もっと不思議』を冠している以上、

 確実に、間違いなく、

 『高いレベルの死の危険性』が蔓延していることだろう。


(残機1のリアル人生で『もっと不思議』に挑むほどの根性はねぇなぁ……ヤマトを連れていけるのなら、おんぶに抱っこの寄生プレイを狙ってみるのも悪くないけど、ボーレの様子を見る限り、たぶん、ヤマトもここには入れないだろうし……)


 当然のように『および腰』になっているゲン。

 しかし、説明書の最後に、


『チョコネコのもっと不思議な館は、非常に難易度が高いダンジョンですが、超良質な素材が山ほど落ちている宝の山です』


 そう書かれていたので、


「超良質な素材か……」


 つぶやきつつ、

 それ以外にも、


「高レベルのモンスターが大量にいるとなると、そいつらをラムドカードにして、戦力の大幅強化をはかれる……ここで諸々を稼げれば、錬金&召喚にブーストをかけられる……」


 ゲンは、かなり悩んだが、


「……まあ、入ったらクリアするまで出られないって仕様でもないし、表の不思議な館と違い、特定アイテムがないと脱出できないわけでもない……試しにちょっと入ってみるか……出入口付近でウロウロして、ヤバくなったらすぐに逃げるスタンスで……」


 などとつぶやきつつ、

 ゲンは、『チョコネコのもっと不思議な館』に足を踏み入れた。



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