7話 俺、天才だし。

 7話 俺、天才だし。


「それが本当なら、多少、興味深いが……しかし、それ、ロコ様に関係ある話か?」


「あるに決まっているだろう、バカか! ちょっとは思考しろ! バカが!」


「……」


 怒りに打ち震えているゲンに、

 ボーレは続けて、


「まあ、ぶっちゃけたところ『俺の偉業を自慢したかったから』ってのが、お前にこの話をした本音のところだがな!」


「……」


「他のやつは、話を聞いてくれそうになかった! しかし、俺はどうしても自慢がしたかった! そこで見つけたのがお前だ!」


「いっそ清々しいな。ここまで完璧にナメられていると」


 怒りが一周して、逆に冷静になったゲン。

 そんなゲンに、ボーレは続けて、


「まあ、俺がお前をナメているのは事実だな。だって、俺の方が強いし」


「いずれ抜くと思うけどな。俺、天才で努力家だし」


 普段のゲンなら、間違っても自分を天才とは言わないが、

 現状のゲンは、ボーレに対してブチ切れているので、

 つい、『かまし』の一環として、

 天才という言葉を使ってしまった。


 言った直後に後悔したりもしているが、

 吐いたツバは飲み込めない。


 ボーレが、渋い顔で、


「まあ、お前が才能あふれる努力家だってことは認めるさ。この速度で成長したヤツを、俺はほかにしらない。けど、今の時点では俺の方が上。というわけで、抜かれるその日までは、全力でマウントをとらせてもらう!」


「後先考えないにもほどがあるな」


「そうでもないぞ。今回、話を振ったのは、自慢したかったってのが理由の大半だが、お前に対してもマジでメリットがある。今のところ、秘密の部屋の存在を知っているのは、俺とお前だけだ。もし、秘密の部屋に、とんでもない御宝(おたから)があったら、お前にもワケ前をやろう。当然、9:1だが、0よりは遥かにいいだろう」


「とんでもない宝があればの話だが……」


「なかったとしても、この話をお前に振ったという事実はかわらない。というわけで、これからも俺は、『お前より強い間』は、ずっと、お前に対してマウントをとっていく構えだけど、お前の方が上になった時は、今日の事を思い出して、俺に対して手心を加えるように。わかったな」


「……ほんと、すげぇ性格してんな、あんた」



 ★



 あのあと、いろいろ、なんだかんだあって、

 結局、ゲンは、


(もし、本当に、そこに凄い宝とかがあって、それが数百億とか数千億とかの大金だったら、また何かチートを買えるかもしれない……そうなれば、『最強』に、また一歩近づく。この先、ロコの剣としてやっていく上で、力はいくらあっても足りない)


 ボーレに誘われるまま、

 『秘密の部屋』の入り口へと向かったのであった。


 校舎を出て、

 結構な距離を歩いたところで、


「ここに地下への隠し扉があるんだ」


 言われて到着したのは、チョコネコの不思議な館の裏だった。

 ボーレは、館裏に生えている大木の前で、


「……ステーキ定食、弱火でじっくり」


 そう言うと、大木がブブブっと揺れて、人が入れる大きさの穴が開いた。


「……なんだ、これ」


「びっくりだろ。呪文をとなえると通れるようになるんだ」

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