決意。

 決意。


『去年の店はいやでちゅよ。あの店、店員の態度が最悪でちゅから』


「もちろん、去年とは違う店だよ。何度も迷惑はかけられねぇ。俺は、民間人に嫌がらせするために王になったわけじゃねぇ」


 そう呟いてから、

 センは、


「というか、俺の誕生日なんかどうでもいいんだ。俺から振っておいてなんだが、本題は別の――」


『どうでもいいとはなんでちゅか! オイちゃんの大事な弟子の誕生日を軽んじるとは無礼な! 切腹を言い渡す!』


「大事な弟子の誕生日を忘れていたヤツに言われたくねぇ。あと、その大事な弟子の誕生日を命日で塗り替えようとしてくるヤツにも言われたくねぇなぁ」


 タメ息をついてから、


「いい加減、話をきけ。大事なことを伝えるから」


『大事なこと?』


 そこで、シューリのトーンがグっと変化して、


『……ふむ……ようやく決意しまちたか』


「ああ、決意したよ」


『まったく、時間がかかりすぎなんでちゅよ……まあ、決意したなら、別に、いいでちゅけど……で、なんでちゅか? 本当なら、雰囲気を整えて、面と向かって言ってもらいたいところでちゅけど、また気が変わって尻込み……みたいになったら鬱陶しいでちゅから、このまま聞いてあげまちゅ』


 あきらかにワクワクしている感じでそんな言葉を紡ぐシューリ。


 そんなシューリに対し、

 センは、




「これから、俺は、本格的に自殺の準備を進めていく」




 そう宣言した。


 それを受けて、

 シューリは、


『まったく、しょうがないでちゅねぇ。イヤイヤでちゅけど、その申し出を受け入れて……ん? なんて?』


 途中まで、花でも咲いているかのような声音だったが、

 急転直下、鬼のような声になるシューリ。


 だが、その機微の変化に気づかないボンクラは、

 空気の読めていない『やれやれ声』で、


「シューリ、ボケを挟まなくていいから、ちゃんと聞いてくれ」


『……』


 シューリの『無言の圧力』を、

 『聞く構えが整ったのだろう』と勘違いしたおバカさんは、

 たんたんと、流れるように、


「俺は、これからガチで自殺をする」


『……』


「自殺だけはやめておこうと、心底から忌避していたが……しかし、色々あって、決心した」


 センエースという人間は、

 自殺という概念を嫌悪している。


 『自殺する人間』を『悪い』という気はないものの、

 『自分が自殺をするのはありえない』とは思って生きてきた。


 カンストに至って以降、

 何度か、『自殺』が頭をよぎったこともあったが、

 しかし、どこかで『実行はしないだろう』と思っていた。


 だが、バンプティとの闘いを経て、

 もう本当に『終わってしまったのだ』と理解してしまった結果、

 センは、本気で『自殺の決意』をかためてしまった。


「というわけで、前々から言っていたように、俺が死んだ後のことは頼んだぞ」


『……』


 ずっと、黙ったままのシューリ。

 さすがのおバカさんも、『あれ?』と思いはじめ、

 だから、慌てた感じで、


「おい、聞いてんのか? おい、ちょっと? ……あれ、つながっているよな……え、あいつ、切った? ウソだろ……いや、繋がっているなぁ……おい、シューリ?」


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