20倍? 足りんな。倍プッシュだ。

 20倍? 足りんな。倍プッシュだ。


「俺より20倍ほど数値が高い……その程度のザコが、俺に勝てると思うなよ」


 宣言しつつ、心の中で、


(言っておくが、当時の俺と、愚神の差は、こんなものじゃなかったぜ)


 ボソっとそうつぶやくカドヒト。


 ――神種が開く前に対峙した際の『バーチャの圧力』を、

 『彼』は、今でもハッキリと覚えている。


 『神』と『神以外』の差。

 それは、実際のところ、

 アリと恐竜どころの騒ぎではないのだ。


 バーチャは、愚かな神だったが、

 決して弱い神ではなかった。


 表層の神でありながら、

 ありえないほどの努力を積んだことにより、

 神を超えた神――『超神』にまで届いた本物の超越者。


 そんな超越者に、人間の身で相対し、

 最後の最後には乗り越えてしまった命の王。

 その狂気は伊達じゃない。


(だから、3000じゃ足りねぇ。もっとこい。足踏みは不要。乗り越えていけ。くだらない常識をぶっちぎれ。小学生の冗談みたいな『頭の悪い非常識』を暴走させろ)


 ――もっと言えば、

 『神界の深層』でもがいていた時の『周囲との差』は、

 数十倍とか、数百倍とか、

 『そんな安い数字』じゃなかった。


 『当時の最強神』との間にあったのは、

 『絶対に届くわけがない』と絶望せざるをえない絶対的な格差だった。


 だが、『彼』は、全ての絶望を乗り越えた。

 そして、ついには、

 そんな当時の最強神でさえサジを投げた邪神を、

 狂気の努力だけで乗り越えてしまった。


 伊達や酔狂ではないのだ、

 彼が背負っている看板は。

 まごうことなき本物の光。


 この上なく尊き神の王。

 いと美しく、舞い散る閃光。


 ――その圧力を、モロに受けて、

 バンプティは冷や汗に包まれる。

 気づけばプルプルと震えていた。

 たった数分、武を合わせただけなのに、

 すでに、バンプティの心は恐怖に押しつぶされそうになっていた。


(たかが存在値170のアリに……なぜ、存在値3000の私が震えている……おかしいだろ……間違っているだろ……こんなの……っ)


 そんなバンプティに、カドヒトは言う。


「俺を倒したかったら、最低でも『俺の全力の100倍』はつよくなってみせろ。そうすれば、さすがの俺も『あ、ちょっとヤバいかも』ぐらいは思うだろうぜ。ま、そこまでいっても、俺は、どうせ超えてしまうだろうがな。なんせ、俺は……俺より強い程度の雑魚には負けないから」


「ふ、ふざけたことばかり……ほざきおって……センエースの猿真似野郎が……センエースが嫌いなら、モノマネなどするなぁああああああああっっ!」


 震えながら、

 しかし、バンプティは、


「ナメるなよ、くそがきがぁああああああああああ!」


 叫んでから、



「まわれぇえええ! カオスバンプティルーレットッッッ!!」



 五分の経過で、また、カオスバンプティルーレットがつかえるようになった。

 存在値2000以上の差がある格下に、追加でカオスバンプティルーレットを回すというのは『ド直球の恥』にあたると理解しているのだが、しかし、現状、そんな余裕はこけなかった。


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