神のシステム。

 神のシステム。


 五分の経過で、再度使えるようになったカオスバンプティルーレット。

 格下相手に、追加でカオスバンプティルーレットを回すというのは間違いなく恥。

 しかし、現状、そんな余裕はこけなかった。


 バンプティは理解した。

 ――カドヒト・イッツガイは、

 最果てに至った自分ですら『全力』で立ち向かわなければいけない強者。


 一瞬、

 『今の自分が全力で立ち向かわなければならないほどの存在など、一人しかいないのでは?』

 『まさか、このカドヒトという男は……』


 などという『ありえない疑問』が頭に浮かんだが、


 『当人が聖典を非難するわけがない』

 『偉大なる神が、そんなワケのわからないことをするはずがない』

 という極めて常識的な発想が『ありえない疑念』をかき消した。


 いや、かき消したというのは表現として間違っている。

 『掻き消えてほしい』と強く願っただけにすぎない。


 いまだ、バンプティの頭の中では、

 ずっと、その『疑念』が暴れている。


 だらこそ、叫ぶ。


「貴様の強さには、おそらく、何かカラクリがあるのだろう!」


 論理的な解釈を求めようとする。

 聖典を信じない者たちと同じ思考。

 結局のところは、しかして、病的な合理の追及。


 『そんなわけがない』という常識的思考が、

 目の前の現実を許さない。


 ゼノリカの天上に至っても、

 人は、弱さを殺しきれない。


「私のカオスミラーのように、力の差をひっくり返せる『特殊な何か』……おそらくは……相手の存在値をコピーして、戦闘力に変換する……といったような、奇妙な力! 貴様はそれを使っている! そうだろう!」


「まあ、それと似たような魔法やスペシャルも、存在しなくはないが……あいにく、今の俺は、その手の奇術を使っているわけじゃない」


「まあ、当然、そう言うだろうな! 奇術師がタネをあかすわけがない!」


「……平行線だな。まあ、別にいいけど。それより、そろそろ、ルーレットをとめたらどうだ? それを止めてしまったら、俺と戦わなければいけなくなるから、躊躇してしまう気持ちもわからなくはないが、すでにサイは投げられているってことを、いい加減、理解しろ。もう、あとには引けないんだよ」


「貴様ごときに、躊躇などするか!! ナメるなぁああ!!」


 怒りのままに、そう叫んでから、


「とまれぇええ!!」


 てっぺんの矢印が示したのは、




「カオス・ラージャン‐エグゾギア、起動!!」




 極悪な混沌を纏ったエグゾギアをその身に包み込むバンプティ。



 それを見て、

 少し離れた場所で見学しているスールが、ボソっと、


「機動魔法……それも、かなり高位の……すごいな……さすがは、九華の第十席……やはり、レベルが違う……最初から、そういう力を見せてくれればいいのに、どうして、存在値3000とかいう、アホなハッタリをかましたのか……」


 呆れと尊敬が混じった複雑な視線を送っているスールの向こうで、


 ――カドヒトは、『苦い顔』をしていた。

 その理由は『恐怖』からではなく、


(ラージャンタイプのエグゾギア……そのチョイスはどうだろうなぁ……まあ、もちろん、強くはなるが……正直、エグゾギアを使ったビルドはたかが知れているからなぁ……つぅか、神種が芽吹いていない状態でエグゾギアを使ったところで、メモリ不足&コスト不足で、豪快にもてあますだけだと思うんだが……)


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