センエースなんて、ジャミの劣化版。

 センエースなんて、ジャミの劣化版。


「お前の行動は非常に正しいと言える。お前みたいなやつがどんどん増えていくべきだ。聖典なんてなくていい。いや、あってもいいが、センエースがどうこうって部分は全削除していくべきだ」


 カドヒトは、熱のこもった言葉で、


「センエースなんて、もはや何もやってないんだから、持ち上げる必要なんてない。今の世の中が安定しているのは、センエースのおかげではなく、ゼノリカのおかげ。ゼノリカが必死になって毎日を積み重ねてきたから、輝くような今日がある。それが認識できているのなら、それでいい」


「……前から聞きたかったのですが……」


「なんだ? 好きに聞けよ。今の俺の仕事は、お前らと対話することだ」


「口ぶりや思想から、リーダーは『センエースが実在する』と思っているようですが……」


 これまでは確認してこなかった。

 する必要がないと思っていた。

 あくまでも『思想の違い』として処理していた。


 しかし、パメラノとの対話で心に熱がともったようで、

 何もかもに対してハンパではいられなくなった熱き若者スールは、

 カドヒトの目をジっとみつめて、


「リーダーは……なぜ、センエースの『実在』を信じられるのですか?」


「センエースって名前のバカは実在するぞ。別にたいしたやつじゃないが」


「……そうなのですか?」


 『センエースは実在した』という『妄言』を吐く者はたまにいる。

 超上位者以外で『不死のスペシャル』を持つ者は、かなり希少だがゼロじゃない。


 スールは、今日までの人生の中で、五人ほど、『センエースを見たことがある』という人間と話したことがある。

 その全員が『パレードで見たことがある』とか『戦争中に一度だけ声をかけてもらった』とか、そういうレベルでしかなかったため、当然、信じるにはいたらなかった。


 基本的に、スールは『センエースは存在した』という発言に対して、

 『嘘つけ』としか思わない。


 が、しかし、ほかならぬカドヒトの言葉となれば、

 『ただの嘘』として処理することはできない。


 スールは、注意深く、カドヒトの言葉に耳をかたむける。


「戦争で暴れたのも、でかい虫をたくさん殺したのも、イカれた神の処理をしたのも事実だ。しかし、あいつが一人で全部をやったってのは完璧に間違いだ。強い力を持っていたのは事実だが、それだけ。先天的にチートスキルを持っていたから、当然のように強かったってだけ。……お前にもわかるように例えると、センエースは、ジャミの劣化版だな」


 九華十傑の第一席ジャミ・ラストローズ・B・アトラー。

 類稀(たぐいまれ)な資質と、先天的な凶悪チートスキルをあわせ持つ稀代の超天才。


「ジャミを全力で不細工にして、天才性を排除して、性格を悪くすればセンエースが出来上がる。どうだ、イメージできたか?」


「……そうなると、なにも残らないような……」


 イケメンで、天才で、人格者。

 それがジャミ・ラストローズ・B・アトラー。


「そう。何もない。先天的なチートスキルがエグかっただけのキ〇ガイ。それがセンエースの実態だ。もちろん、戦わせれば、それなりに強いが、結局のところは、それだけの暴力装置。敵を殺すことは出来ても、人を豊かにすることはできない」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る