リフレクションという会社。

 リフレクションという会社。


「カドヒトは、所詮、存在値170程度の『天下案件』……どう考えても、天上が出るほどの相手ではないのじゃが……」


 ――『仕事』には役割というものがある。

 天上には天上の、天下には天下の、『こなすべき仕事』がある。

 だから、これまでは天下に任せてきた。


 カドヒトの存在は、ゼノリカにとって『腹が立つことこの上なし』だが、

 実質的には『アホがアホなことを叫んでいるだけ』なので、

 さすがに『天上が出張るほど』ではなかった。


 だが、ここまで我慢したのだから、

 さすがにそろそろ『特例扱い』してもかまわない時期かもしれない。


 ――そう思ったパメラノは、


「……どうせやるなら手加減はするな。徹底的に説教してこい、バンプティ」


「かしこまりました」




 ★




 パメラノとの対話を終えたスールは、

 その足でリフレクションの本部へと向かった。


 反聖典組織リフレクションは、

 地下組織というわけではなく、

 普通に、表だって行動している。


 まず、リフレクションは『聖典に文句を言うだけ』の『いやがらせ組織』ではない。


 『カドヒトお手製のセキュリティツールのレンタル業』や、

 『一般人向けのボディーガード業』や、

 『ハードボイルド系の探偵業』や、

 『裏社会を対象とした管財人的な仕事』や、

 『それらの業務の経験談をまとめた雑誌の販売業』など、

 いわゆる『グレーゾーンな社会』を相手とした、

 『トラブルシューター』的な事業を行っているという、

 ちょっとした規模の会社。


 ※ ウエス〇ゲートパーク的なアレを想像してもらえれば、

   リフレクションの仕事は理解しやすい。


 『災害時におけるボランティア』や『孤児院の運営』などの慈善事業もそれなりに行っていて、税金もしっかりと納めている。


 ※ 慈善事業は『ある程度稼いでいる会社』であれば『絶対に背負わなければいけない義務』なので、それなりにやっているからといって、特別褒められることでもない。 


 リフレクションは、聖典に異を唱えているという基本スタイルをシカトすれば、

 かなりまっとうなホワイト会社。

 ゼノリカが処理しきれていない『社会の闇』から、

 善良な一般市民を守る『盾』の役割。


 ゆえに、本部のビルには看板もかかっているし、

 その看板には電話番号だってキッチリと記載されている。


 『聖典教とは関係ない一般人』の視点で言うと、リフレクションは、

 『ゼノリカとは別枠』の『便利な万事屋さん』的な会社である。




 ――『パメラノから解放されたスール』が、

 その足で、リフレクションの本部に戻ると、

 奥の客間にはカドヒトがいて、

 来客用のソファーに寝転んでいた。


 カドヒトは、スールの姿を横目にとらえると、

 ニっと笑って、


「おつかれ。奇襲は成功したか?」


「奇襲って……変な言い方しないでくださいよ。俺は、パメラノ猊下に意見をぶつけにいっただけです。ちなみに、試みは大成功でしたよ。直接対話することもできましたし」


「へぇ……パメラノと対話できたのか……よかったじゃねぇか。なかなかできることじゃない、貴重な体験だ」


「……まあ、実際、そうですね……」


 スールはカドヒトのトイメンに腰を落として、


「……『世界のこれからについて』を語り合った……とかなら、宝物にできる時間だったのでしょうけど、聖典の在り方について、俺が一方的に文句を言っただけみたいな形だったので、有意義な時間とは言えませんでしたね」


「有意義かどうかはともかく、お前の行動は非常に正しいと言える。お前みたいなやつがどんどん増えていくべきだ。聖典なんて、なくていい。いや、あってもいいが、センエースがどうこうって部分は全削除していくべきだ」

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