『ナイア・ゲン・フォース』VS『ヤマト』

 『ナイア・ゲン・フォース』VS『ヤマト』


 ヤマトは、

 『自分が投げたクナイをゲンにあっさり止められた』

 と理解したと同時、


(……尋常ではない反射能力……)


 心の中で驚嘆しつつも、

 胸の前で、両手で印を結び、


「影分身ランク19」


 分身の上位魔法を使い、

 高位の分身をつくりだす。


 そして、


「乱刃透斬(らんばとうざん)ランク20」


 シノビ属性の高位魔法を行使。

 見えない無数の刃が飛翔する。


 ――最強クラスの魔法を連発。

 世界最強の個である『完全院リライト』でさえ、

 無傷ですますことはできない猛攻。


 それほどの技を放っていながら、

 しかし、ヤマトは、心の中で、


(勝てるビジョンがわずかも描けない……勝ち負けどころか……かすり傷一つ……あたえられる気がしない……)


 そうつぶやく。


 まるで、海を前にしているみたい。

 勝ち負けなど考えられない。

 海を前にした者は、いつだって、ただ、その大きさに圧倒されるのみ。


 ――ナイアの大きさに圧倒されながらも、

 ヤマトは、止まることなく、


「風雅領域(ふうがりょういき)ランク20!!」


 さらにバフをかけていく。


 『ランダムな追い風』を受けた『見えない無数の刃』でナイアを刻もうとするヤマト。

 けれど、当然のように、


「――『ためすな』っつってんだろ」


 ナイアがフイっと、右から左へ指を揺らすと、

 それだけで、ヤマトの分身も刃も消え去った。


(……魔法が通じない……ランク20クラスの魔法でも相手になっていない……そんな存在がいるわけがないのに……事実、目の前にいる……夢だと思いたいけれど、どうやら、夢ではない模様……)


 『冷静な分析』は『発狂』の証だった。


 ナイアの狂気にあてられて、しっかりと狂ってしまった、

 けど、彼女の中にある『プライド』が『狂い切ること』を許さなかった。


 結果、まるで出来の悪いAIのようになった。

 壊れていると言わざるをえない一挙手一投足が続く。


 壊れている頭と、過度な困惑がグチャグチャになって、濃密にラリっている。

 それが現在のヤマトの状況。


(ははははははは……なに、この状況! ははははははははは!)


 それでもおびえて腰をひかしたり、ビビってへたりこんだりしないのは、

 彼女の異常な『プライドの高さ』ゆえ。


 まるで『どこかのイカれた幸運の女神様』でも模倣して創られたかのように、

 彼女のプライドは常軌を逸していた。



 ――ヤマトは、魔力を膨らませて、

 無数のバフを積みまくり、

 希少なアイテムもぶちこんで、




「――死眼ランク21」




 最高峰の即死魔法を使用する。

 今のヤマトにできる最高の魔法。

 たとえ即死をレジストされても、『一定値以上のダメージ』や『ステータスの低下などのデバフ』が必ず入るという超高性能即死魔法。


 が、それも、


「……しつこいな、無意味だっつってんだろ……」


 ナイアにはきかなかった。

 ナイアが軽く手を振れば、

 どんな魔力も一瞬で霧散した。


 ダメージが入っているようには見えない。

 ステータス低下が起きているようにも見えない。


 その状況を目の当たりにして、


(ははは……あーあ……こりゃ、ダメだねぇ……はは……)


 精気のない目で笑う。


(……アレはダメだ……相手にしちゃダメなやつ……魔法なんか、いくら使ったって無意味も無意味。何千、何万、何億回を積んでも、完全に無意味なパターン……)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る