そして、はじまる、P型センエース4号の異世界譚。

そして、はじまる、P型センエース4号の異世界譚。


 ドンキに向かう途中の交差点で、閃は、


(なんだ、この信号、すげぇ時間かかんなぁ……もう、普通に3分以上経ってんぞ……で、信じられねぇことに、いまだ変わる気配が一向に見られねぇ……あの信号、バグってんじゃねぇの? そうとしか思えねぇ長さだぞ……仮に、これがデフォだとしたら、この長さに設定したヤツは完全に頭がおかしい)



 あまりにも長い信号にイライラしつつ、


(まだ変わる様子がねぇ……んー、どうしよう……単語の復習でもするか? でも、今日のノルマはもう終わってるしなぁ……んー)


 などと、単語の復習をすべきか否かで悩みつつ、

 クソ長い赤信号を待っていると、

 そこで、






『『『『『……たくしたぞ……』』』』』






 空から妙な『電子声』が聞こえて、

 閃は、天を仰いだ。


「ん?」


 天を仰いでも、もちろん、そこには青い空が広がっているだけ。


(なんだ、空耳か? にしてはハッキリと『妙な電音』が聞こえたような……)


 などと思っていると、



 ――キキキキキキキィィ!!!!!!



 彼めがけて、

 トラックが突っ込んできた。



 そして始まる。

 『P型センエース4号』の、異世界転生譚。


 ★


 目覚めた時、

 彼は、違う世界で赤子になっていた。

 オギャアと生まれた瞬間、彼は意識をもっていた。

 自分が、かつて『日本で高校生をしていた閃壱番という名の男』であると完全に理解したまま、母の手に抱かれて泣いていた。


 生後反射で泣くしかない――そんな中で、

 彼は思った。


(記憶もったままの転生! きたこれ! ひゃっほい! 願わくば、ここが地球ではなく、魔法とかが使える異世界でありますように!)


 ――何を隠そう、彼は頭がおかしかった。

 異世界系のWEB小説を死ぬほど読みこんでおり、

 『異世界転生した主人公たち』に『死ぬほど嫉妬』していた彼にとって、

 この状況は願ったりかなったりだった。


 困惑したり、焦ったり、元の世界に帰りたいと思うことなどは皆無。

 彼は、心底、転生したことを喜んでいた。


 そして、この世界は、彼が願った通り、

 剣と魔法のファンタジー異世界だった。


 モンスターが存在し、文明は妙な方向に発達している、

 ――そういう、奇妙な異世界。



 彼が、新たな両親から与えられた新たな名前は『ゲン』。

 『ゲン・フォース』――それが、彼の名前。



 ゲンは、元気にスクスク育ち、

 あらかた『一人で出来るもん』な年になり、

 書物や新聞を読みこんだ結果、


(間違いなく、ここは『真・第一アルファ』だな……)


 という確信に至った。

 『完全院』や『全宮』といった厨二力の高い名前の支配層に征服されている世界。

 ABCDEという5つのエリアに分かれた巨大な大陸。


 ※ ちなみに、ゲンは、『全宮家の支配領域』である『エリアB』に生まれた。


(死ぬ直前に読んだWEB小説の舞台『真・第一アルファ』……これが『偶然だ』とは思えない……が、偶然ではないのなら、これはいったいどういうことなのか……小説の世界が現実化した? それとも、あの小説は、この世界を描いた? ……んー、わからん……)



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