どうせ、結果は大差ない。

どうせ、結果は大差ない。


「タスキ? なんだよ、それ? 概念レベルで知らんのだけど」


「先週の金曜、放課後のホームルームできまったんだよ。お前は6限終了のチャイムと同時にそっこうで帰ったからもちろん知らんと思うけど」


「……おいおい、マジかよ……なんで、俺がいないタイミングで、そんな大事な話し合いしてんだよ。これ、普通にイジメだぞ。教育委員会のお手を煩わせる系のアレだぞ」


「……」


 再度、渋い顔をして黙りこくった反町。

 静寂な時間を経て、



「……まあ、いいや。完全ではないが、多少は修正できた……これ以上やるとバグる可能性もあるし、もう、あきらめて、これでいこう……」



 小声で、そうつぶやくと、

 続けて、表情をフラットに変えて、


「お前が参加しないことに関してはみんなもう諦めてるから、いいんだけど。――逆に『なんで今日は放課後に閃がいるんだ』って、みんなが不安を感じているレベルだし」


「確かにな……俺も、放課後に残るつもりはなかったんだけど……って、さっきからなんなんだ、お前のその表情は」


「……しかし、ズレるなぁ……なんで、こうもズレるかねぇ」


 反町は、鬱陶しそうにそうつぶやいてから、

 『もういいっ!』的な態度で、


「それよりも、買い出し分担で、お前がタスキ担当になったことに関しては、みんなあきらめていないからな。無視をしたらイジメに発展すると思え。ちなみに、イジメの内容は、文化祭実行委員長の強制任命だ」


「……すげぇ宣言かましてくるじゃねぇか、その『最強の脅し文句』には、さしもの俺も、動悸と悪寒がとまらねぇよ……」


「違うなぁ……もう一歩、たりねぇんだよなぁ……」


「だから、なにがだ! なんで、お前、さっきから、俺の発言に対して、いちいち、落胆してんだよ! これ、どういう種類のいやがらせ?!」


「もう、いいや。だいたい合っていればいい。どうせ、結果は大差ない」


 反町は、タメ息と共にそうつぶやいてから、


「――というわけで、絶対に買い出しよろしく」


「また急に話を戻してくるのか。お前、どんだけ会話が下手なんだよ……ってか、え、マジで普通に買い物に行かされる感じ? うっぜぇなぁ……」


「そんな大変でもないだろ、一個買い物するだけだし。あ、でも、必要なのは『ただのタスキ』じゃなくて、『本日の主役』って書かれている例のアレな。じゃ、駅前のドンキでよろしく。この辺だと、あそこにしか売ってないからな」


「……だるぅ……」


 タメ息をつきながら学校を後にしたセン。

 面倒くささと鬱陶しさに殺されそうになりながらも、

 一応、『クラス内での最低限の空気』は読んでいくつもりの閃は、

 言われたとおり、

 駅前のドンキに向かっていた。


 少し手前にある大きな交差点で、


(なんだ、この信号、すげぇ時間かかんなぁ……もう、普通に3分以上経ってんぞ……で、信じられねぇことに、いまだ変わる気配が一向に見られねぇ……あの信号、バグってんじゃねぇの? そうとしか思えねぇ長さだぞ……仮に、これがデフォだとしたら、この長さに設定したヤツは完全に頭がおかしい)

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