シアエガ。

シアエガ。


「代表に教えてもらった『強くなれるCレリック』を扱うための条件は複数ある。例えば、戦闘技術が低い者は使えない。あと強すぎると『飲まれる』から使えない」


「……『戦闘力が特定範囲内の者』しか使えない……なるほど、面倒だな。それ以外の条件は?」


「あとは『使うと決めてから、数分が経過しないと使えない』って条件がある」


「……ほう」


「あと、強者が使う場合は例外なんだが、それほど強くない者が使用する場合、『複数の条件を満たす必要がある』ってことを、『敵』が知っていなければならない。『使用するための条件を知らない相手』には攻撃できないって条件があるからな。コスモゾーン・レリックってのは、強者が使う場合は自由なんだが、弱者が使う場合は、いろいろと手順を踏まないといけない、そういう厄介なしろもの。いや、まあ、手順さえ踏めば、俺みたいな『そこまで強いわけでもない者』でも『大きな恩恵』を受けられるんだから、厄介という言い方をすべきではないのだが」


「……」


 その時点で、

 バロールふくめ、

 ゼノリカの面々は、


 ――いつでも臨戦態勢に入れるよう両手をフリーにした。


 『誰でも知っていること』だけを、ダラダラとバカみたいに、

 まるで『時間でも稼いでいるかのよう』に繰り返していた無知蒙昧な男が、

 急に、具体的なことを語りだしたことに対する当然の警戒心。


 バロールは、


(しっかりと積まれたな……まあ、『想定通り』だから別にいいんだがな。『使わせてしまうデメリット』よりも『確認できるメリット』の方が上……それだけの話さ)


 と、心の中でつぶやいた。


 そもそも、ゼノリカは、

 『何も知らないバカ』を誘拐するほど愚かではない。


 『それなりの情報をもっている者である』と判断したため、

 少なくない時間をかけて準備をして、強襲・拘束したのである。


 そして、ぶっちゃけ、『序盤』から気づいていた。

 目の前の幹部が『何かを覚悟したような顔』をして、

 『たっぷりの間』をとって喋りだした時から、

 『こうなる可能性』を想定して話を進めていた。


 つまりは……



「ちなみに、代表から聞いた、その『Cレリック』の名前は……」



 そこで、

 ガタラは、自分の心臓に右手をあてて、



「あとはお任せします、『シアエガ』様。――『ご自由に』どうぞ」



 宣言した瞬間、

 ガタラの胸部から、無数の触手が飛び出してきて、

 ガタラの全身を包み込む。


「う・う・う……ぉおおおっっ!!」


 奇妙な触手――シアエガは、

 ガタラの全てを奪い取ると、




「面白い状況じゃないか、ガタラ。私に『コトの責任』を押し付けようとした『その性根』の部分に関しては不愉快と言わざるをえないが……許そう。――ガタラ、貴様は、この者たちを、五大家の関係者だろうと疑っていたが、違う。この者たちは、コスモゾーン・レリックの影響下にない。よって、五大家の類縁ではない。――ああ、そうだ。つまり、私の所有物にできるということ。――違うな。おそらくは、貴様の妄想通り、異世界の者だろう。異世界は実在する。世界は、ここだけではない。私も詳しくは知らんがな。――やかましい。そんなことは私も知らん。どうでもいい。迷い込んだのか、攻め込んできたのか知らん……が、とにかく僥倖。これだけ高水準な魂魄を支配できる機会を得た事……間違いなく幸運。非常に喜ばしい」



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