シロアリのガタラ。

シロアリのガタラ。


 ――今回、九華の面々が、平熱マンから与えられているミッションは、

 『この世界のアンダーワールドから情報を得る事』。



 最重要メインミッションはもちろん『神帝陛下の盾』だが、

 同時進行のサブミッションは、脅威のサーチ。



 『神に害を及ぼす者が近づいてきた』と分かった瞬間に、『その時点におけるその他のミッション全て』を完全放棄して、盾になることは絶対的前提。

 その前提を踏まえた上で、

 ジャミたちは、サブミッション的に、

 この世界のアンダーワールドを探っている。


 まず、目をつけたのは、この世界における二大犯罪者集団の片割れ『シロアリ』。


 エリアBを拠点にしている『ゴキ(所属人数十数名の少数精鋭サイコパスチーム)』と、

 エリアAを拠点にしている『シロアリ(所属人数三桁以上の大手ヤクザ集団)』。

 『この世界に生きる者』で、その二つの裏組織を知らない者はいない。

 カリスマ的『悪』のツートップ。



 ――どこがどう『最大脅威』とつながっているか不明な現状ゆえ、

 『受け攻め』は極めて慎重にならざるをえない。

 思案に思案を重ねた結果、

 『情報集めにおける最善手』として導き出されたのが、

 『社会の外側』に干渉すること。


 もちろん、そこにも多大なリスクは潜んでいるのだが、

 『いきなり中枢を攻める』よりは『迂遠に事を進める方がいい』という結論に至った。

 ゼノリカですら、それぐらい慎重にならざるをえないほど、

 この世界は、多角的に不気味だった。



 ジャミたちの視線の先で、

 シロアリの幹部『ガタラ』は、人気(ひとけ)のない路地裏へ入った。

 入り組んだ路地裏を進んだ先に、

 シロアリのアジトの一つが存在する。


 すでに、あらかた準備を終えているジャミたちは、

 手はず通りに周囲をかため、

 そして、


(――捕縛)




「? なっ!! な、なんだ、お前ら――ぅ――」




 ジャミの命令が下った直後、

 バロールたちは、周囲の影より飛び出してきて、

 即座に『魔法の拘束具』でガタラを拘束し、


 そのままの流れで、


「――ドナドナ――」


 ドナが空間魔法を生成し、

 捕縛したガタラとともに、空間内に飛び込むと、

 すぐに、出口を閉じて、

 捕縛されて動けなくなっているガタラを、


「いてっ」


 テキトーに、その辺へと放り投げる。



 ――ここは、体育館サイズの、少し広い亜空間。

 白い壁に覆われていて、特に特別なギミック等はない。


(くっ……この拘束具……俺のオーラを抑え込んできやがる……何をしても外せる気がしねぇ……もしかして、コスモゾーン・レリックか?)


 コスモゾーン・レリックではなく、センが創った究極超神器の一つ。

 センエースコレクションの中だと、特に優れたアイテムでもないし、

 現状は神気を纏っていないので、本来の力は発揮できないが、

 それでも、十分に破格の性能を誇っている。


(……くそったれ……いっさい気配を気づかせずに、この俺を拘束するとは……こいつら、何者だ……)


 拘束されているガタラは、

 心の中でそうつぶやいてから、

 キっと、強い視線でジャミたちを睨み、


「て、てめぇら……誰に何をしているのか、わかってんのか? 俺はシロアリの――」


「ガタラだろ。知っているから、自己紹介は不要。威勢よくスゴんでみせる必要もない」


「……ど、どういうつもりだ……俺に手をだして、ただで済むと――うぐっ!」


 腹に蹴りをいれられて押し黙るガタラ。

 そんなガタラに、カティが、



「凄む必要はないって言ったよね? 時間の無駄だから、こっちの質問にだけ、バカみたいに答えてくれる?」


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