みんなすごい狂信者っぷりだねぇ。

みんなすごい狂信者っぷりだねぇ。


「存在値1000が上限である以上『最果ての向こう側におわす神帝陛下』であっても『かすり傷を負う可能性』はゼロではない。もちろん、神帝陛下の強さは次元が違うから、かすり傷を負う可能性すら天文学的な低確率……しかし、0ではない以上、我々が盾になってしかるべきだ」


 ジャミが発言を区切ってコーヒーを口にしたところで、

 サトロワスが、


「はっはー、みんなすごい狂信者っぷりだねぇ。もし、私がゼノリカに関係ない他人だったら、ドン引いていると思うよぉ」


 サトロワスは常に俯瞰で自分を見ることができるオッサン。

 常に冷静で、徹底して瀟洒で、

 軽くキザなところもあるが、けれど、

 それだって『不快感を伴う嫌味』にはなりきらず、

 いつだって、絶対的に、シックで、スマートで、


 はしゃいだり、興奮したり、オタオタしたり――

 なんて、そんな『無様な姿』を他人に見せることは決してない、

 見た目だけではなく、すべてが『良い感じ』のオッサン。

 それが、栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第三席『サトロワス』。


 そんなサトロワスでも、

 神に対する感情だけは、やはり『スマート』ではいられないようで、


「まあ、かくいう私も、どっぷり狂信者なわけだから、こうして、君たちの意見に、何一つ異議を挟むことなく、ただただ頷いているんだけどねぇ」


 常に『一歩引いたところから、全体を見る視点』を信条にしているサトロワスだが、

 『神帝陛下に対しての想い』だけは、

 『彼以外のイカれた狂信者たち』と同じ『視点』になってしまう――



 ――と、その時だった。

 ピタっと、全員、口を閉じて、

 『視界の外』にいる『人物』の動向に注意する。



 『九華が着目している人物』は、

 この世界の犯罪者集団『シロアリ』の幹部。

 名前は『ガタラ』。

 全身がハリガネのように細長く、眼光が鋭い、蛇のような男。

 ガタラの存在値は見えていないため『101以上』は確定。


 ちなみに、身のこなしなどから『存在値は500にすら達していないだろう』と推定されている。

 もちろん、見えないのだから、真実はわからない。

 巧妙に隠しているだけかもしれない。

 本当は、カンスト級のバケモノかもしれない。


 わからない。

 が、わからないからといって計画を中止させるのはありえない。


 ジャミたちは、この上なく尊き神の狂信者。

 ゆえに、止まれない。

 前に進むしかない。



 ――通信魔法を使い、声を出すことなく、

 今ミッションのリーダーであるジャミが、


(ようやく動いたか……では、手はず通りに)


 そう言うと、


((((了解))))


 バロールたちは、口に出すことなく返事をして、

 それぞれ席を立った。



 ――今回、平熱マンから与えられているミッションは、

 『この世界のアンダーワールドから情報を得る事』。



 最重要メインミッションはもちろん『神帝陛下の盾』だが、『脅威の影すら見えない状況』で『ひたすら盾として神のそばにいるだけ』では宝の持ち腐れもいいところ。


 『どんな脅威から守ればいいのか』すら分かっていないこの状況では、

 脅威をサーチすることも盾の役目。


 神の盾ともあろう者たちが、『脳死壁』しかできないようでは話にならない。



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