この期に及んで、まだ、独りでやるつもり?

この期に及んで、まだ、独りでやるつもり?


「……ナメくさりやがって……俺の宝を……危険にさらしやがって……」


 三人とも、センが言葉を発するたびに、体をビクリと震わせる。

 この世の誰であれ、

 『センエースの怒り』には恐怖を感じずにはいられない。



「上等だ、くそが……お望み通り、本気でキレてやるよ……」



 そう呟いてから、

 センは、ようやく、『怒り』を『自分の奥深く』へと閉じ込めた。


 いつまでも不満や怒りを垂れ流して周りを委縮させるパワハラ上司ではないので、

 重たい感情であっても、キチンと、自分の中へと落とし込むことができる。


 理不尽や不条理を嫌う神は、

 だから、きちんと頭を下げる。


「悪いな。怒りを無為に放出してしまった。謝罪する」


 センが正式に頭を下げたことで、

 アダムと平は慌てて『いけません、おやめください』と恐縮したが、


 シューリだけは、当然、


「鬱陶しいから、ピリつかないでもらえまちゅ? 常に、ドンと構えていなちゃい。『この上なく尊き神の王』ともあろう者が、みっともない」


 と叱ってきた。


 そんな、一時的な空気弛緩ののち、


 センが、


「こうなったら、悠長にはしていられねぇ。……とりあえず世界をまわって、サクっと『最低限必要な情報』を集めてくるから、お前らは、ゲート周辺を要塞化して、『敵がゼノリカにカチコミ』をかけてきても『数秒は足止めできる』ようにしておいてくれ。ゼノリカ防衛に関してなら、ゼノリカ・コレクションだけじゃなく、センエース・コレクションも自由に使ってかまわない。あとは『いつでも俺に救援要請を送れる連絡網の準備』を――」


 と、そこで、シューリが、


「いたっ」


 パカンと、センの頭をしばいた。


「……てぇなぁ……この駄女神。何、なぐってんだ。……大事な『指示出し』をしているところなんだから、邪魔すんじゃねぇ」


 そんなセンの叱咤に対し、

 シューリは、おふざけ一切なしの、

 『まっすぐが過ぎる真剣な顔』で、


「この期に及んで、まだ、全部独りでやるつもりでちゅか?」


 と、強めの口調でそう言った。

 シューリの語気の強さに、

 センは、少しだけ怯んだが、


「当たり前だろ……こんなもん、俺以外はどうにもならんだろぉが。さっき、説明した通り、この世界のラスボスは、おそらく俺クラス。ラスボスの配下連中も、俺と最低限は戦えるほど強大。となれば、これまで通り、俺が全部を背負うしかない」


 と、そこで、平が、


「師よ、お言葉ですが、この世界では『存在値1000』が上限なのですよね?」


「ああ。探せば、『1000以上の出力』を出せる『抜け道』や『裏技』もあるかもしれないが、現時点だと1000以上は出せない」


「……ならば、我々も、師のお力になれるかと」


 その発言を受けて、

 センはタメ息をはさみ、


「無理だ。さっき俺が闘ったやつは、戦闘力がバカみたいに高かった。ハッキリ言うが、お前とゾメガが共同戦線を張っても相手にならん」


「ならば、ミシャとともに戦います。まだ戦力が必要とあらば、五聖も九華も総動員して、死力を尽くし、必ずや、敵を殲滅してごらんにいれましょう」


「無理。ダメージを与えるくらいなら出来るかもしれないが、倒すことはできない。敵のHPを数割削るぐらいが限界。確実に全滅する。なんの意味もない」



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