上等だ、クソが。

上等だ、クソが。


「師の命令に背くとは……不敬極まりない扉ですな。破壊の許可を」

「不可能だ。このゲートだけは、なぜか、神気を纏っている。今の俺では破壊できない」



「主ですら破壊できない? それはいったいどういう――」

「まず、前提として、この世界にいる間、存在値は『1000』に固定される。俺も例外ではない。そして、ゼノリカの扉は全て俺が創った究極超神器。もし破壊しようと思えば、最低でも存在値15兆は必要。というか、存在値15兆クラスでも破壊するのに10時間はかかる『耐久型』のアイテムで――」


 それから、センは、伝えておくべき情報を、

 三人に対し、出来る限り丁寧に説明した。




「――というわけで、敵はおそらく相当に強大だ。ラスボスに関しては、俺に匹敵するか、あるいは俺以上の可能性が極めて――ん? どうした、ゾメガ」



 『異常事態の詳細説明』をしている途中で、

 ――ゾメガからの通信が入り、センは意識をゾメガの声に集中させる。



「……ほう……」



 報告を受け止めると、

 センは頷いて、



「……了解だ。引き続き、ゼノリカ内の調査を進めろ。……ぁあ、ちょっと待て。一つ命令だ。今後は『よっぽどの面倒ごとが起きた時』以外は報告しなくていい。もちろん、今回のような『よっぽど』の時は俺の指示を仰いでもらいたいが、細かいことは、あとで報告書にまとめて提出しろ。ここからは、迅速かつ円滑に行動していく必要がある」



 通信を終えたところで、

 平の、


「何かございましたか?」


 問いに対し、

 センは、くもり顔で、


「予想どおりの『最悪事態』が発生した。『もしかしたら』とは思っていたがガチだった」


 不安にさせすぎないようトーンに気をつけながら、

 しかし、抑えきれない怒りと焦りを見せるセン。


 その機微を受け止めた平が、

 一度、ゴクっと息をのんで、


「それはいったい……」




「現状、この『Q‐8ゲートから』しか『ゼノリカの外に出られない』ようになっている」




「?!」


「原初の世界に集めたメンバー全員……つまり、ほぼ全員が『この世界に閉じ込められた』……ふざけた話だぜ……」



 ギュっと拳を握りしめるセン。

 明確な怒り。

 現状『自分の宝』が危ない目にあわされている。


 センの心情をたとえるなら、

 『死ぬほど苦労して手に入れたマイホームが、気づけば、ゴリゴリの紛争地帯に曳家(ひきや:建築物をそのまま移動させること)させられていた』

 みたいな感じ。


 当然、センの怒りは際限なく膨らんでいく。

 ふいに、

 アダムが、

 腰を90度に曲げて、


「申し訳ございません、主上様……私が勝手な召集をしたせいで……」


 震えながら、謝罪の言葉を述べた。


「お前のせいじゃない。『このいやがらせ』を決め込んできた『誰かさん』が100%悪い」


 センは、自分の怒りをアダムに向けるようなマネはしなかったが、

 己の中で膨れ上がった感情を『丁寧に隠す』こともせず、


「いやぁ……ほんと……ひさしぶりだよ……ここまで……」


 センのオーラにビリっとした『強い熱』がともる。

 洞察力ゼロのバカでも『ハッキリと理解』できる『感情の漏出』。

 普段は『尊大になりすぎない』よう、

 あえて『強めに飄々』としているセンだが、

 この時ばかりは、誰の目にも明らかなほど怒り狂っていた。


 センの爆発的感情を受けて、

 その場にいた三人は、同時にビクっと肩を震わせた。


「……ナメくさりやがって……俺の宝を……危険にさらしやがって……」


 三人とも、センが言葉を発するたびに、体をビクリと震わせる。

 この世の誰であれ、

 『センエースの怒り』には恐怖を感じずにはいられない。



「上等だ、くそが……お望み通り、本気でキレてやるよ……」


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