お前は美しい。

お前は美しい。


「ハッキリ言うが、お前とゾメガが共同戦線を張っても相手にならん」


「ならば、ミシャとともに戦います。必ずや、敵を殲滅してごらんにいれましょう」


「無理。ダメージを与えるくらいなら出来るかもしれないが、倒すことはできない。敵のHPを数割削るぐらいが限界。確実に全滅する。なんの意味もない」


「少しでも傷を与えられるのなら、やる意味はございます。師の負担が少しでも減るのであれば、我々は何でも致します。さあ、ご命令を、我が師よ。我々の覚悟・忠義を、どうか、お受け取りください」


「お前らの覚悟と忠義は受け止めてやる。しかし、死ぬ必要はない。今回の仕事は俺一人でやる。というか、俺に任せろ。それが最も安全で最善の――」




「師よ! われわれは『師に守ってもらわなければ何もできない子供』ではありません!」




 今回の平は、センがいくら言ってもひかなかった。

 普段ならば『だいぶ前』に引き下がっているだろう。


 センが『任せろ』と言ったら、任せるしかない。

 バグの時もバーチャの時も、

 センは一人でやると言ってきかなかった。

 『その頑固さ』と『平では力不足で足手まといにしかならない』という事実が、

 最終的には平を引かせた。


 しかし、今回、平はいっさい引く気がない。

 平は、センから『詳細を聞かされている段階』で、既に重たい覚悟を決めていた。


 平が引かない理由は三つ。


 一、

 『存在値1000が限度』という縛りがある状況では、

 究極最強神センエースでも、

 『完璧安全・絶対無敵』ではないから。


 二、

 『バグ』や『愚神バーチャ・ルカーノ・ロッキィ』の時とは違い、

 平たちも、『数値』だけで言えば戦えるラインに立っているから。


 三、

 理由一とダブるが、

 『センエース』という存在が、

 平の中で、あまりにも大きくなりすぎたから。



 ――果て無く尊き神を、万が一にも、絶対に失いたくない――

 ――これまでと違い、今回の条件ならば、盾ぐらいは出来る――



 そんな平の想いが、

 平に『神への反論』を叫ばせる。



「師よ! ボクは、今日まで、必死になって積んできました! 一秒たりとも寛怠(かんたい)することなく、毎日、毎日、阿呆のように、剣を振り続けてきました。それは『このような事態が起きた時』のため! いつか、師を煩わせる敵を断つために、必死になって、師の背中を追い続けてきたのです!」


「ああ、知っている。そうでなければ『今のお前の領域』にはたどり着けない。お前の努力は尊い。それだけの強さを得て、しかし、お前はわずかも歪むことなく『俺に瞠目させるほどの高潔さ』を保ち続けた。お前は美しい。お前は……俺の宝だ」


「……し、師よ……っ……!!」


 師の言葉が、平の全てを包み込む。

 恍惚が膨れ上がり、

 自分が自分でなくなったかのように思えた。


 フワフワとしている平に、

 センは言う。


「だからこそ厳命する。お前は俺の宝……つまり、俺の所有物だ。勝手に壊れることは許さない」


「道具というのなら、ボクは師の盾になることを望みます! そして『その覚悟』は、決して『ボク個人のワガママ』ではなく、ゼノリカの総意!」


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